一章 Fantasia Land Online(日常編)
Episode 1「アバター」
目を閉じてるか不安になるくらいの暗闇に包まれた直後、奥の方から小さな白い光が現れて、それが急速に視界全体へと広がる。
「ようこそ!
暗くなったと思ったら急に眩しくなって目が痛いよ……。
両目をパチパチと開け閉めしてたら、これまた急に女性の陽気な声が聞こえてくるから、思わず辺りを見回した。
見渡す限り、白、白、真っ白。
この空間を眺めてるだけでも、目を細めてしまうくらい。
でもおかしいな、声の主が見当たらない。
「申し訳ありません、今はわたくしの姿をお見せすることはできないのです」
まるで心を読んだかのような発言。
いや、どこからか私のことを見ているなら、キョロキョロとする動作から察することは簡単だよね。
流石に心の中を覗けるわけ無いよね?
「えーと、ここは……?」
「ここはFantasiaです。正確には、Fantasiaに行かれる前に、
「……えっと、アバターって何ですか?」
「え。…………あ、え…………あぁ。アバターとは、自分の分身体です。この場所に訪れた方々は、創った姿でFantasiaに行ってもらいます」
なんか間抜けた音が漏れてたような気がするけど……私の無知さに驚いたわけじゃないよね?
「では、そのパネルから、貴女の情報を自由に設定してください」
同時に、半透明のパネルが宙に浮いたまま出現する。
凄いなあ。これ、完全に浮いてるよ!
ちゃんと触れた時の感覚も指先に伝わるし。
それに、天の声さんも、自分の感情で話しているようにしか思えない。
今のゲームはこんなにも進化してるんだなぁ……。
「あの、どうかされましたか?」
おっと、アバターのことを忘れてた。
「すみません、ちょっと感動してて。すぐに終わらします」
「は、はあ……。ゆっくりで構いませんよ?」
――【RACE】――
▷「人」
▶「獣人」 ▷「猫種」
▷「狼種」
▷「兎種」
▷「狐種」
…(etc)
――――――――
むむ、まず種族を決められることに驚いたけど、なんか選択肢が多い。
人はともかく、獣人もなんとなくはわかる。
あれだ、動物の耳やら尻尾やらが生えたやつでしょ。
天の声さんに質問してみると、どうやら当たりらしい。
因みに、どれを選択してもゲーム内容に影響は無いと言われた。
それなら、思い切って獣人にしてみようかなとも思ったけど、結局人にした。
いきなり獣耳が付いたり尻尾が生えたりしたら、私自身が困惑するかもしれないからね。
――【EXTERIOR】――
▷「体格」
▷「顔」
▷「髪」
――――――――
次は外観ね。
おお~、これも、顔を変えたり、髪を染めたりと、色々と選べるね。
体格や顔は現実とかけ離れ過ぎたらダメらしいけど……ま、あんまりいじる気も無いから、私には関係ないかな。
――【WEAPON】――
▷「剣」
・STR=15
・初期ステータスポイント割り振り後に初期STR1.2倍補正
▷「両手剣」
・STR=20
・初期ステータスポイント割り振り後に初期STR1.2倍補正
▷「片手斧」
・STR=15
・初期ステータスポイント割り振り後に初期STR1.2倍補正
▷「両手斧」
・STR=20
・初期ステータスポイント割り振り後に初期STR1.2倍補正
▷「弓」
・STR=10 DEX=10
・初期ステータスポイント割り振り後に初期DEX1.2倍補正
▷「短剣×2」
・STR=5 AGI=10
・初期ステータスポイント割り振り後に初期AGI1.2倍補正
▷「槍」
・STR=10
・初期ステータスポイント割り振り後に初期STR1.2倍補正
▷「杖」
・INT=15 MP=10
・初期ステータスポイント割り振り後に初期INT1.2倍補正
▷「盾・短剣」
・STR=3 VIT=20
・初期ステータスポイント割り振り後に初期VIT1.2倍補正
▷「楽器(笛)」
・INT=5 ・DEX=10
・初期ステータスポイント割り振り後に初期DEX1.2倍補正
――――――――
くっ……全くもってわからないよ。
武器の名前はなんとなくわかるんだけどね、STR? DEX? 何それ美味しいの?
う~ん、まだよくわからないし、とりあえず最初は扱い易そうな短剣にしよう。
でも、後で変更とかできないかもしれないしなぁ、ここは慎重に……って、あ!
そうだ、質問すればいいんだ。
「あのぉ……この装備って後で変更できたりしますか?」
「はい。Fantasiaの通貨は掛かりますが、冒険者ギルドと言う施設で変更可能ですよ」
「ありがとうございます!」
よしよし、それなら短剣で問題ないね。
ポチッとな。
――【STATUSPOINT】――
残りステータスポイント「100」
▷STR「5」
▷VIT「5」
▷INT「5」
▷DEX「5」
▷AGI「5」
▷LUK「5」
――――――――
また出てきたよSTR。
どうやらこのステータスポイントというのを、STRとかVITとかに割り振るようだけど、と言うかもう5ポイント振られてるけど、何が何だかわからない。
唯一
だからと言って、これ以上天の声さんに質問して手間を取らせてしまうのも申し訳ないしなぁ。
もう運に全振りしてしまえ!
――【NAME】――
(15文字まで)
「― ― ― ― ―」
――――――――
名前……どうしようかな。
流石に本名は良くないよね。
こういうのは本名をもじった方が良い、って美玲も言ってたし。
ポチポチッと。うん、天才!
よし、これで決定ボタンを押せば。
――【ツユ】――
・LV「1」
▷MONEY「1,000」
――【STATU】――
・POINT「0」
・HP「10/10」
・MP「10/10」
・SP「10/10」
▷STR「5」(5)
▷VIT「5」
▷INT「5」
▷DEX「5」
▷AGI「6」(10)
▷LUK「105」
――【WEAPON】――
▷右手「鉄の短剣」(納刀中)
▷左手「鉄の短剣」(納刀中)
――【ARMOR】――
▷頭「――」
▶手
▷右「――」
▷左「――」
▷胸「――」
▷腰「――」
▷足「――」
▷その他「――」
――――――――
おお! よくわらない単語ばっかだけど、何故か達成感が湧くね。
しっかし、ステータスはLUK特化だなぁ……今更だけど、やっちゃった?
あれ、この
STRとAGIにプラスされてるけど……あっ、武器の能力か!
じゃあ、AGIの基本値はなんで6? 他は10とか5なのに。
あっ、これは短剣の説明欄にあった、1.2倍補正がどうとかの効果か。
それなら、AGIに100ポイントを割り振ったら……
105×1.2で、計126になってたってことだよね。
いやいや! たとえそうだとしても、終わったことは気にしない! 美玲の切り替えを見習わなくては!
「ツユさん、良いお名前ですね。この設定で宜しいですか?」
まだ変えられるチャンスはあるらしい……。
し、しし、しないよそんなの!
「だ、大丈夫です……多分」
「わかりました。では貴女をFantasiaに送り届け――え?」
天の声さんがまたも間抜けた声を出した時にはもう、私の足元に淡く光る魔法陣が浮かび上がり、つられて私も光りだし、足元から徐々に透明になっていく。
ほへぇぇ、やっぱり最近のゲームは凄いなあ。
それなのに天の声さんはどうして慌てた声を出しているのかな?
「え、ちょ、ま、待って! 多分ってどうゆことですか!? ダメよ、それはダメ! ちゃんと説明するから! でも、魔法が発動してしまってからじゃキャンセルはできな――――」
体が完全に消えると、一瞬の暗闇の後、目の前は町になっていた。
ほほう、ワープとかそういう系? やっぱり凄いなぁ。
だけど、あの天の声さんの慌ただしさと言ったら。
もうちょっと静かに送り出して欲しかったよ。
《スキル『LUK・UP』を獲得しました》
《称号『神を困らせし者』を獲得しました》
――【※】――
・〝MONEY〟とは所持金額のこと
・〝MONEY〟は、例えとして日本円に換算した数値で表示される
・【STATUS】とはステータスのこと
・HP・MP・SP以外のステータスは、レベルアップ時に
・()の数値にはスキルの効果も含まれる
・【WEAPON】とは武器のこと
・【ARMOR】とは防具のこと
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