第26話 アレスくんの武器は槍に決まってるだろ!

 アレスくんが天使の笑顔によるたらし込みのおかげで、守衛のおっさんは心ここに在らずといった感じでアタシの質問に次々と答えてくれる。


「……でさ、ダンジョンの入り口ってここだけしかないの? ここって結構大きなダンジョンなんでしょ? だったら他にも出入りする場所があってもおかしくないよね?」


 ただこの質問は、ちょっとセキュリティクリアランスが高かったらしく、おっさんの顔が真顔に戻りそうになった。


 ので、アタシは再びアレスくんの手をニギニギして合図を送る。


「入り口ってここだけなのかな? ぼく知りたいな♪」


 そう言っておっさんにニコッと笑いかけるアレスくん。


 ズッキューン♥


 って、音が聞こえたかと思うと、おっさんの顔が再び「ほわわ」となる。


「ここ以外には二つ入り口があるけど、それは国とギルドが専用で使う場所なんだ。なので冒険者は使えないよ。どこにあるのかも秘密。あと、もし他の出入り口を見つけたときは必ず報告しなきゃ罰せられるよ。ちゃんと報告すると国から報酬が出るんだ」


「へぇ、報酬が出るんだ。凄いねアレスくん」※ギュッと手を握る

「す、凄い! お、おじさん……ありがと(ニコッ)」


 ズキューン♥


「どどどどういたしましてカワイイお嬢さん。もしお嬢さんがダンジョンに潜るというならおじさんが一緒に潜ってあ……」


 アレスくんの魅了が凄まじ過ぎて、おっさんの人生を狂わせかねないところまできたので、アタシは早々にアレスくんを連れてその場を離れた。


 ダンジョンの入り口が三つあるというのは良い情報を得た。もしアレスくんの追手とダンジョン内で遭遇した際に、他の二つの入り口は生命線になるかもしれない。探索するにあたっては、まずあと二つの入り口を捜すことを目標にしよう。


「ねぇ、シズカ。ダンジョンにはいつから潜るの?」

 

 ダンジョン周辺の出店を巡りながら歩いていると、アレスくんがふとそんなことを訊ねてきた。


「そうだね。準備が必要になるから……三日……いや、四日後からかな。今日のところはアレスくんの装備とか選ぼうか」


「武器? 武器を買ってくれるの!?」

 

 いろいろな気苦労で、死んだ魚の目のようにハイライトオフしていたアレスくんがパーッと顔を輝かせる。武器が手に入るってだけで元気になるなんて、やっぱり男の子なのかもしれない。


 アレスくんには魔法の才能があるようだから、将来的には魔術を学んで欲しいのだけど、それ以前に生存に必要最低限の戦い方を身に着けて欲しい。


 そういうわけで、武器屋に寄ったアタシたちが買ったのは鋼の穂先のついた短槍。ブンブン振り回す剣ではなく、単純に突きと引き戻しに特化。


 正確には突きというより突撃かな。体の小さいアレスくんでも、体重を乗せた突撃なら魔物に痛打を与えることはできる。無茶させるつもりはないけれど、敵に突進する度胸をつけることもできるだろう。


 と、アレスくんに説明したら、喜んで槍を手に取ってくれた。


 ゴスロリメイドの槍使い。


 いいねb


 とアタシは内心でサムズアップした。


(いいぞb 大変いい♪)


 聞いてもないのにミシェパが返事した。




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