第16話 頭のおかしい女認定なんて、されたくないに決まってるだろ!
いきなり自分の話になったミシェパが、頭を上げて不思議そうに顔を傾げる。それにしても、例の「おねショタ本」のメイドお姉さんを模した今のミシェパの顔と姿は、正直に言って絶世の美女である。
それはともかく!
ミシェパ、今後もずっとアタシとアレスは一緒に過ごすことになるよね?
(そうだな)
ということは、ミシェパと会話しているアタシが、奇妙な声を上げたり、突然、笑いだしたり叫んだり、そんなことがこれからも起こるってことだよね?
(そうだな。アレスヴェル様には、お前が頭のおかしい女ということがわかってもらえるだろう。大変良い事だと思うぞ)
このデカ乳メイド……どしてくれよう。
というか、アタシが声を上げたときのアレスくんの心配そうな顔見てなかったの? アンタ、これかもずっとアレスくんにあんな不安な思いをさせる気?
(ぐっ。そんなことはないぞ。だが一体どうすれば……)
もうミシェパのこと、アレスに話しちゃおうよ。
それしかないって!
アタシが頭のおかしい女だとアレスくんに思われるのを回避するのは!
いや待って! もしかすると「頭にミシェパがいる」なんて話をする方が、頭がおかしいと思われる確度が高いかもしんない。
いやそれでも、どうせミシェパと会話してたら突然奇妙な声が出ちゃうのは、まず絶対に避けられない。なら、訳も分からず突然奇声を上げヤバイ女扱いされるより、
「彼女は今、頭の中のミシェパと会話しているのだなぁ」
と、アレスの中で理由づけできた方が、不安は少しは和らぐのでは? 単に「頭のおかしい女」から「可哀そうな女」に昇格できるのでは?
って、昇格ってなんだよ! どっちにしても頭のおかしい女ってことに変わりないじゃん!
(おい……おい! 頭のおかしい女!)
ちょっと待って、ミシェパ! 今、記憶を辿って「お前を消す方法」を検索してるところだから!
(おい、やめろ!)
ミシェパが切羽詰まった声を上げた。
(わ、分かった! 分かったから! お前の言う通り、私の存在をアレスヴェル様に知ってもらうことにする)
そうしたところで、アタシがアレスくんに頭のおかしい女認定されるのは変わらない。だから「お前を消す方法」を検索する!
(待て待て! そんなのはないと思うが、万が一あったらヤバイので待ってくれ! ちゃんとする! お前が私の存在を明かしても、頭のおかしい女認定されることがないような方法も考えている! だからその検索はやめてくれ。すごく嫌な予感しかしない!)
本当に? 本当にアレスくんに頭のおかしい女認定されない?
(されないされない! マジされないから!)
ならばよし!
それじゃ詳しく話を聞こうじゃないか。
脳内ではミシェパが、ベッドの上で居住まいを正した。
(ではシズカよ。今から起きて、アレスヴェル様と話をしてくれ)
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