第15話 アレスくんのこと? アタシが守るに決まってるだろ!
アレスヴェルの父親である魔王ヴェルクレイオス。彼は鬼人王と呼ばれた魔族の英雄で、武勇に優れる鬼人族の中で頂点に立っていた男だそうだ。
ミシェパによると、そんな猛者中の猛者が一瞬で首を切り落とされたのだという。
(もし魔族がやったのであれば、魔王の名乗りをあげているはずだ。だがそんな話は聞こえてこなかった)
つまり「魔王殺害の犯人は魔族ではない」というのがミシェパの考えだった。それじゃ一体、誰がアレスくんのお父さんを殺害したんだろう。
(それはわからん。もしかしたらお前の言う通り人間の仕業かもしれん。だが魔王様が襲われたとき、我らは魔族軍の陣中まっただ中にいた。魔族の誰かが手引きしたことは間違いないだろう。でなければヴェルクレイオス様の背後など取れるはずがない)
そう言うとメイド姿のミシェパは、力が抜けたようにベッドの上にポフンと座り込んでしまった。
(いずれにせよ。そやつが魔王に名乗り上げなかったせいで、アレスヴェル様が追われることになってしまった……)
ミシェパはアレスを魔王にしたいの?
(そうだな。魔王になって欲しいという思いは持っているのは確かだ。だが今となっては、ただアレスヴェル様には幸せになって欲しい。それが魔王になること以外のことであっても、アレスヴェル様が笑顔になられるのなら何だって構いはしない)
フッと息を漏らして微笑むミシェパの顔は、まるで母親そのものに見える。
(御母堂はアレスヴェル様を生んですぐに身まかられたからな。実際のところ、母親代わりのようなものだ)
しばらく沈黙した後、突然ミシェパの顔に強い決意が浮かぶ。
(しかし魔王になるかどうかに関わらず、これからアレスヴェル様には強くなってもらわねばならん。追手も撃ち払わねばならぬだろうし、他国に逃げ延びるにしても力は必要になってくる。なので……)
バッ!
ミシェパがベッドの上に正座したかと思うと、スクリーン越しのアタシに向って頭を下げる。
いきなりどうした!?
(シズカよ! どうかアレスヴェル様を鍛えてやってくれ! 生きる術を、戦う方法を、逃げる手段を教えてあげて欲しい。頼む! アレスヴェル様が独り立ちできるようになるまで守ってくれ)
ミシェパが頭をベッドに押し当てて懇願している。いきなりそんなことを言われても……。いや、アタシなんてケチな冒険者だよ? しかも職業は盗賊だよ?
(それで問題もない。私もフォローするし、何よりお前は勇者なのだ。魔族から見て魔王のような存在であるお前がアレスヴェル様を守ってくれるというなら、これほど心強いことはない!)
まぁミシェパに言われなくても、アレスのことは守る覚悟はとっくに決めてるけどね。
(そ、そうか!)
だってアレスくんは、アタシの王子様だし。
(それはない!)
ちょっと! 即座に否定すんな!
(それはない!)
また言ったよ!
(大事なことなので!)
アア、ソウデスカ……。
まっ、アレスくんのことはアタシが守る。それで決定。でっ、その次はミシェパのことだよ。
(私がどうかしたか?)
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