第13話 なるほどそれなら仕方ないかな!

 脳内の出来事とはいえ、前世のアタシの部屋でくつろぐミシェパを見て、アタシはとても驚いた。


 いやそれよりなにより、クローゼットに隠してあった哲学書がどうしてバレてるの!?


(印象世界だからな。お前にとって思い入れのあるものは、存在感が輝いて見えるというか、そういう感じなのだ。クローゼットの中で、このおねショタ本が眩しいくらい光っていたからな、私もつい興味を持って見てしまったよ)


 なるほどそれなら仕方ない!


 アタシは納得した。


 他にもミシェパには、色々と言いたいことや聞きたいことが山のようにある。


 が、まず先にこれだけは言っておかなきゃならない。


 その本の後編が出る前にアタシは転生してしまった。だから……


(何!? まさか!? そんな!?)


 脳内でメイド姿のミシェパの動揺するのが見える。


 アタシはミシェパに、本の続きを見ることは永遠にできないという残酷な事実と、アタシ自身の悔しさを伝えるべく大声で告げた。


「後編は見れないの!」

「シズカ!? 本当に大丈夫!?」


 脳内で叫んだつもりが、思わず声が出てしまった。


 くわっ! と目を開いて叫んでしまったアタシを、ものすごく不安な表情で見つめるアレスくん。


「ご、ごめん……昔の悲しい夢をみちゃって……」

「そうなんだ……」


 アレスくんは焚火を起こし、今は鍋を掛けてスープを作ってくれているようだった。


「暖かいものを食べた方がいいと思ったんだ。出来上がるまでにはまだ時間が掛かるから、もう少し寝てて」


 そう言ってアレスくんは、横になっているアタシの頭を優しく撫でてくれる。


「ありがと。ごめんね」


「いいから休んで……」


 アタシは目を閉じて、再びミシェパとの会話に戻った。おねショタ本よりも大事な話があったから。


(そうなのか?)


 そうだよ! すごく大事なことだから!


(なんだ、言ってみろ)


 それってあたしの記憶の世界なんだよね。だったらあのさ、そのアタシの部屋から出れる? 下に降りたり、玄関から出たりできる? 


(いやできんな)


 ミシェパは、そう答えるとアタシの部屋の扉を開いて見せた。扉の外は真っ黒な空間が広がっているだけ。窓の方も開いてもらったが、そこも同じようになっていた。

 

(こんな感じで、外には出ることはできん。見えるのはこの部屋だけだ)


 もしかしたら前世の家族と会える……少なくとも姿を見ることができるかも、なんていう淡い希望が消えてしまった。


(そういうことだったか。勇者転生のトラブルもあって、ここは色々と壊れているようだからな。徐々に直していけば、色々と変わってくるやもしれぬ。希望は捨てずともよいと思うぞ)


 そっか……。


 って、ちょっと待って。


 アルバム! アルバムが本棚にあったはず! 


 それなら家族の顔を見ることができる!


 思いついたアタシは興奮して、ミシェパに言った。


「アルバムだよ! ミシェパ!」

「シズカ!?」


 興奮のあまりアタシはまた大声を出してしまい、そしてまたアレスくんを心配させてしまった。




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