第4話 情報収集


 両親が海外にいる関係で、生活費として月10万円使っていいとカードを渡されている。通学は徒歩だし光熱費や通信費、授業料など諸々を引き落としての10万円なので、ほぼ食費として使っていい金額だ。食費としての10万円は決して少ないとは言えないが、何かまとまったものを買おうとすると10万円のなかでやりくりするだけでは何もできない。


 とはいえ、収納庫の中には金、銀、プラチナなどの貴金属のインゴットが多量に入っている。気持ちはお大尽だ。


 公開はできないがミスリルやアダマンタイトと言った謎金属も大量に入っている。さらに言えば、石油まで入っている。もっとすごいのはエンシャントドラドンを始めとしたドラゴンだ。ゴブリンの死骸もまだ捨てていなかったので残っている。こんなのをどこかに持っていけば大騒動になるのは間違いない。大騒動の渦中の人になりたいわけではないので、決して出せない秘蔵品ということになる。将来俺が死んだらいったいどうなるのだろうかと今から心配している。




 話がそれてしまったが、戸籍も手に入れているアスカが個人番号カードを作って銀行に口座を作った。


 そのあと、貴金属商に行って金のインゴットを2本ほど売った。今の金の値段は1グラム7000円もした。売った金の重さはちょうど40キロ。あとで申告をして税金を払うことになるらしいが、一応銀行のアスカの口座に2億8千万万円ほどが振り込まれた。これだけあれば、小市民の俺の考えるようなことは何だってできる。


 ということで、アスカが欲しがっていたパソコンを買った。俺もノートパソコンを持っているが、アスカのパソコンは高性能のデスクトップパソコン。自分で部品を注文して組み立ててしまった。アスカにすればその程度のことは簡単な組み立てだものな。それでも最終セットアップまで終了するには2時間ほどかかっていた。意外とパソコンの組み立ては難しいのかもしれない。俺のノートパソコンがいかれたらアスカにデスクトップパソコンを作ってもらうつもりだ。もちろん代金はアスカに払ってもらう。



 そのアスカが、このところ空いた時間には自分のパソコンをいじって何やらやっている。


「アスカ、最近パソコンでカチカチやってるけど何してるんだ?」


「はい。マスターの知識は妙な方向に偏っていますので、自分で情報を集めています」


「何気に、失礼だよな」


「そんなことはありません。事実を述べたまでです」


「そうかよ」


「自分のパソコンなので気兼ねなくインターネットの情報を収集できるようになり直接自分で出向いて情報を集める必要がなくなりました。これまでマスターのノートパソコンを貸していただいていましたが、検索履歴がどうも私の目に焼き付いてしまい作業効率が低下していました。これからはそういったこともありませんのでどんどん情報を集めていくことができます」


「俺の検索履歴が気になったとしても、アスカはその先を見てるわけじゃないよな?」


「さすがに私はああいったもの・・・・・・・には興味はありませんので」


「悪かったな。男子高校生のたしなみとしてああいったもの・・・・・・・を閲覧しなければならないのだ」


「分かりました。マスター、頑張ってください」


「すまないな。それでアスカはネットから情報を集めると言っているが、ネットの情報が正確かどうかはわからないんだぞ。ネット情報を鵜呑みにしていたら大変なことになる。自分の目で見て確認できるならそれに越したことはない」


「マスターの仰る通りですが、日本では街中を駆けまわれませんので次善の策です」


「それは、仕方ないな」


「この家では、新聞をとっていませんが、ネットの情報の正確さを確認するために新聞をとってもらえませんか?」


「それは順番が逆だ。新聞の情報が正しいかどうかを確認するのにネットで情報を集めるんだ」


「ネットだとマスターのおっしゃるように、その情報の真偽は不明ですし、1つの事柄に真逆の説明があることも良くありますがどうすればいいんですか?」


「そりゃ、自分の好きな方を信じればいいのさ」


「そうなんですか?」


「あのな、新聞社だって、ほとんどの記事を通信社から買ってんだぞ。自分の思ってること、読者にそう思わせたいことと内容が違うような記事は買うわけないだろ。新聞社が自分で書いてる記事なんかはほんの少しだ。アスカには、そんな訳の分からない記事などいらないだろ? テレビでニュースを見るか、ネットで十分だろうに」


「マスター、私は新聞の重要性を知っているのです」


「ほう? アスカくんは何を知ってるというのかね?」


「昔、どこかの島のサンゴ礁に落書きをして『空気読まないKY』という新語で流行語大賞を取った話がまず1つ。元は小さな記事だったそうですがすごいですよね」


「アスカ、それは新聞社が自分で書いた記事だな。だけど少し意味が違うと思うぞ」


「すみません。この話は、マッチとポンプのお話でした。私たちも、黒龍をわざわざ目覚めさせて斃した後にドラゴンの調査に行ったことがありました。調査報酬を貰った上に魚もいっぱい獲れたので二重の意味でおいしかったですね」


「俺達のはワザとじゃなかったろ。あれは、たまたま。あっちのはワザとやったことで俺達より悪質だぞ」


「俺達より・・って、マスターも少しは悪質だったと認めてるんですね」


「あれはもう遠い遠い過去の話さ」


「あと1つは、新聞に載ったファンタジーのおかげで、世界中に銅像が建ったそうです。銅像と言うからには文化の象徴です。ファンタジーで銅像が建つんですよ!

 それこそ新聞の力ですよね。マスターが受験勉強もせずに下手なファンタジーを書いていくら投稿しても何にもならないのに比べると凄すぎです。やはり新聞は日本の文化の象徴ではないですか?」


「わかった、わかった。そんなに新聞が欲しいのならいいことを教えてやる。すぐそこの通りの角に新聞配達屋があるのは知ってるだろ?」


「はい。知ってます」


「そこに行って、捨てる新聞があったら1部くれないかって言ってみればいい。今朝の新聞を100部くらいくれるんじゃないか?」


「ほんとですか。さっそく行ってきます」


「気を付けて行けよ。新聞くれなくても、新聞配達屋を壊すなよ。あと、車にぶつかって相手を壊すなよ」




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