035.創造魔法の実験 立った?!

 そしてお腹が一杯になった僕は、眠ってしまった魔法のお師匠様をオンブして階段を上った。

 王女様達は、バルトスさんや他の冒険者のみなさんと、お酒を飲みながらまだ騒いでいる。


 因みに僕が食べたのは、お野菜とお肉がゴロゴろと入っているシチューと、大きなお肉の塊だった。

 それでも銅貨6枚だと言うのだから、安いのかな?


 あと、美月さんが飲んでいたコーンスープを味見させてもらったのだけれど、とっても美味しかった。

 なぜか、アメリアさんに怒られたのだけれど、僕は何か悪い事をしたのかな?


 「ふふっ、まるでアキラ君がお兄さんみたいね」


 後ろから、セレーネーさんこと美月さんの声が聞こえてきた。

 どうやら彼女も寝るみたい。


 「う、うん。本当に妹が出来たみたいだよ。あっ、美月さん」

 「なに?アキラ君」


 僕は、まるでデートに誘うみたいに緊張している。


 「あの~~……明日なのだけれど……、一緒に……お買い物に行かない?」

 「えっ、いいの?あっ、でもアキラ君には修行が……」


 そう、僕には午前中は剣術、そして午後には魔法の修行が待っている。

 一日でも早くファフニールを倒すべく、特訓をするんだ。


 「うん、だからお昼ご飯を食べながらは、どうかな~って」

 「あ、それなら私はお弁当を作ろうかな~~」


 「えっ、本当に!?」

 「うん。期待しててね」


 (やった~~!!まるでデートみたいだ!!)


 あまりにも嬉し過ぎて、気が付いた時には、美月さん達が泊まる部屋の中にいた。


 メーテちゃんを起こさないように、ゆっくりとベットに降ろす。

 まだ8歳だというに、一人で旅してたなんて信じられない。


 でも彼女は僕よりもレベルが上なんだよね。

 どんな修行をして来たのだろう?


 「それじゃ~、おやすみなさい。美月さん」

 「おやすみなさい。アキラ君」


 折角、二人っきりに成れたというのに会話が思いつかない。


 「あっ、そうだ。まだMPが余っているから、シャワーを出そうか?」

 「ううん、私は今朝使わせてもらったから、今度はアキラ君が使って」


 馬車の移動で埃まみれになったというのに、彼女は気配りを忘れない優しい女の子だった。


 「分った。じゃ~また明日」

 「うん。また明日……」


 部屋に戻った僕は、不思議と眠くなかった。

 きっと隣の部屋に美月さんが居るからかもしれない。


 シャワーを浴びる気にもなれずに、そのままベットに横になる。


 「あ~~どうしよう……」


 気が付けば、僕は買い物ではなくて、デートプランを考えていた。

 でも僕はこの街の事を良く知らないんだよね……


 知っているのはこの冒険者ギルドと、バルトスさんの武具屋、あとベルトン先生の診療所ぐらい。

 とてもじゃないけれど、デートで使えるところはどこも無い。

 せめて洋服屋さんでも知っていればなぁ……


 「そうだ。魔操法マジック・メソッドの練習でもしよう。あと創造魔法クリエーション・マジックも!」


 悩んでいても仕方がないと、僕は寝る前の修行を始める事にした。

 剣と神秘魔法ルーン・マジックは教わるとして、とてもレアな魔操法と創造魔法だけは、自分で鍛える必要がある。

 特に魔操法は段を上げなければならないらしいからね。


 朝に成ればMPは回復するから、取り敢えず余ってるMPの移動をする。

 手と足には移動が出来る事は確認済みだから、あとは頭に移動してみた。


 (うん、頭にも溜められる)


 そこでふと、僕はバカな事を思いついてしまった。

 通常は頭×1、手×2、足×2の5ヶ所にMPを溜めることが出来る。

 ようは胴体から出っ張っているところにMPを溜められるという事。


 ということは、アソコにも溜められるのではないだろうか?


 そう、男には有って、女には無いところ。


 自分でもバカだと思うけれど、でも、思いついたからにはやってみるしかない。

 僕はお母さまと美月さんの為に強くなると決めたのだから。


 頭に移動したMPを、そのまま真っ直ぐ下に向って降していく。


 「あっ……うん、これはまずい……」


 出来る事は出来たのだけれど…………大きくなっちゃった。


 (てへっ♪)


 ここは禁断の地として、封印しようと思う。

 とてもじゃないけれど、このまま美月さんの前に立てないよ。


 その時、僕の頭に雷が落ちた。


 (あっ、そうだ!アニメみたいに、MPを手から出せないかな!?)


 絶対に周囲のマナを使う魔法の方が、威力が高いのは分かっている。

 だけれど、どうしても試してみたくなった。


 だって、魔力の弾を手から飛ばして、攻撃したら格好いいよね?


 でも、想像を超える威力が出て壁を壊してもいけないし、そもそも貴重なMPを無駄に使う訳にはいかない。


 だから右手から出して、左手で受け取れば……


 (あれ?出ない……)


 なんか出そうなのだけれど、出ない……まるであれみたいだ。

 あっ、もしかして……


 (出来た!!)


 試しにお手々の皺と皺を合わせてみたのだけれど、そうしたら移動出来たんだ。


 <魔操法が2段になりました>


 しかもスキルのレベル?も上がったみたい。

 残念だけれど、空中を移動出来ない代わりに、皮膚から出して受け取る事が出来たんだ。


 もしかしたらだけれど、他の人にMPをあげることが出来るかもしれない。


 魔操法はこの辺にしておいて、あとは創造魔法だ。


 創造魔法も色々と判らないことがある。


 例えば、大きさによって消費するMP量が違うみたいだけれど、素材によっても変わるのか?

 あと効果時間はどれぐらいなのか?


 カレーのルーは、かなり気合を入れて作ってみたけれど、全部食べちゃったから消えたのか確認が出来てないんだよね。

 それに、梯子も穴の中に忘れて来てしまったし……


 でもMPが勿体ないから、大きな物は作れない。

 そうだ、美月さんが良く付けてたアレを作ってみよう!


 出来る限り長持ちさせたいから、しっかりとイメージした後に、効果があるか分からないけれど気合を入れてみる。


 (ぬぬぬぬぬ、創造魔法、お花の付いたヘアピン!)


 ピカッと光ると、掌にイメージした通りのヘアピンが現れた。

 銀色の髪留めに、青い花の飾りが付いている。


 僕は小さな頃からブロックで遊んでいたからか、頭にイメージを浮かべながら物を作るのは得意だ。

 多分、美月さんが使っていたのと、殆ど同じだと思う。


 (あっ、しまった……)


 小さいのは良かったけれど、ヘアピン部分は金属で、お花はプラスチックだった。

 これだと素材によるMPの消費量を比べる事が出来ないよ。


 (はぁ~失敗しちゃった)


 明日からは、色々な素材でビー玉でも作ってみようかな。

 同じ大きさにすれば、きっと比べられるよね?


 と言う事で、今日はMPを1/3も使っちゃったから、これでおしまい。

 残りは明日の修行に備えて、足にでも溜めておこうっと。


 (おやすみなさい。みんな……あと、お母さま)

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