あの夏、いなくなった君へ。
七山
第1話 三日前
夏の夕暮れ時、みんなは僕の大好きな女の子を死にものぐるいで探している。
ねぇ、何処に行ったの…?
早く出てきてよッッ!!
お願いだから出てきて…!!
太陽の光は女の子をどんどん見つけにくくするかのように月と入れ替わりで落ちていく。
僕もみんなと一緒に山や森の中に入って探しにいった。茂みの中や道路に止まっている車の中。色んなところを探し回った…。
太陽が役目を終え、月がみんなを見守っている時も探した。
それでも、
◇◇◇
みーんみんみんみんとセミが鳴く頃だろうか。季節は夏、8月の夏。
僕は今日も目をつぶり夏を想像しながら暇を持て余している。
寝転がっているとふと頭に映像が流れ込んでくる。
夏と言えば夏休みだ。
ああ、そう言えばあの頃も夏だったな。
――10年前の初恋だ。
◇◇◇
「
一階からママの大きな声が飛んでくる。ベットに張り付いて離れない僕の背中を無理やり離し、重たい足で部屋から出る。
ぼんやりとする目をこすり一階に降りるとテーブルには朝食が用意されていた。
「ほら、早く食べて。遅刻すわよ?」
ママは僕の水筒にお茶を入れている。
食パンを食べて牛乳を飲み干すと一気に頭が冴えてくる。そして心はどんどんドキドキしてくる。
僕には少し前から初めて好きな人が出来た。明るくてクラスでも人気の可愛い女の子だ。
学校に行く楽しみはあの子を見る事。少しでもお喋りをすることと言ってもいいほどに僕はあの子が大好きだ。
僕はあの子の事を考えるとランドセルに荷物を急いで詰め込み「いってきまーす!」と大きな声を出して玄関を飛び出した。
家から学校までの短い距離を僕はランドセルを上下に揺らしながら走った。横についてるキーホルダーはブルンブルンと暴れ回りながら音を鳴らした。
教室につき机にランドセルを置くと背中の汗で張り付いた服を親指と人差し指で摘んで剥がす。ランドセルから用具を出して、お道具箱に入れて僕は席に座る。
当たりを見渡せばまだみんな立っている。女の子達はお喋りをしているし男達は鬼ごっこをしたりして遊んでいる。
(僕も鬼ごっこに混ざりたい…けど花恋ちゃんとお喋りしたいし…)
僕は何とか座り続けた。そのまま周りを見るといつも早く来ている花恋ちゃんが今日はいない。
今日は遅刻でもするのかな…?
チャイムがなり、それと同時に先生が入ってくると、ゾロゾロとみんなは席に着き始めた。やがて立っている人が先生以外いなくなるとひとつぽっかりと空いた席が僕の隣にあった。
花恋ちゃんの席だ。
「
(今日休みなのかぁ…大丈夫かなぁ?)
花恋ちゃんがいないのはとても悲しい。
五時間の授業を花恋ちゃんが今何をしているのか考えながら受け、いつもなら放課後に遊ぶ友達とも遊ばずに僕は家に帰った。
「だだいまー」
とパパとママのいない家に言った。パパとママは夜まで働いてご飯の時間になったら帰ってくる。小さい頃からそうだったからもうへっちゃらなんだ。
僕はママからいつも言われる「帰ってきたら手洗いうがい」を洗面所でやって、リビングの机に置いてある今日のお菓子をとって自分の部屋に向かった。
自分の部屋でお菓子を食べ、ゲームをしてベッドに寝転がると1点の所をじーっと見つめて目をつぶった。明日は学校で会えるかなぁ…
僕は口元を綻ばせながら眠りについた。
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