俺が求めたのはこんな異種族コメディじゃねぇ!
新木稟陽
第1話 ふざけんな!
俺の名は
俺が高校生になったらどんな世界が待っているのだろう。学園ラブコメだろうか。巻き込まれ系のバトル展開だろうか。ひょんなことから異世界に転生するかもしれないし、意味不明な部活に入ってまったりほのぼの系かもしれない。俺には、そんな主人公になる資格がある。
まず、高校の立地。親の仕事で越してきた片田舎、且つ都内までは小一時間。ある程度閉鎖的でありながら休日の都内お出かけイベントも可能。
次に、俺自身の特徴。低すぎず高すぎずの身長に痩せ型、本当に特徴のない顔と髪型。もちろん黒髪。そして神代翔吾という一風変わった苗字。主人公足り得る人材である。
そんな俺が入ったのは公立彩凛高校。女子の制服がかわいく、校則も緩い。故に髪染めも可能。この意味わからん名前もプラスポイントだ。
この学校に入って早二ヶ月。夏服への切り替えが始まっている。同性の友人はそれなりに出来た──というか、クラスメイトに恵まれて基本的に皆仲が良い。良いクラスだ。しかし彼女は愚か、女子の友達ができない。どうも僕、女の子と話すとなんか緊張しちゃって、大して話題を広げられない。
でもまだ焦る時間じゃない。自己紹介で調子こいて玉砕、とかしてないから巻き返しはいくらでもきく。次の席替えのときに隣になった女の子に話しかけよう。頑張れ、次の席替えのときのぼくくん。
まあ閑話休題はこのくらいにしておいて、俺は今校舎裏に来ている。というのも、掃除の時間に黒板消しを窓の外で叩いていたら落としてしまったのだ。それで掃除をサボりがてら大回りして外に来ていた、のだが──
ふと、低木の奥から何か物音がした気がした。
何か、大した引っ掛かりがあったわけじゃない。ちょっと覗きに行けば、その分掃除をサボれるなぁなんて思っただけ。なの、だが。
「────え」
「────あ」
その低木の奥に、うずくまる男がいた。跪き、何かを抱えた男。その何かに、食いつく男。
"それ"は、猫だった。もう動かない、猫だった肉の塊。
如何せん田舎の学校なものだから、時たま野良猫が乱入することがある。男はそれに文字通り食らいつき──口の周りを、べっとりと赤い液体に濡らしていた。
「え……ダイアス?」
「か、かみしろ……」
その男は、クラスメイトの島田・幸太郎・ダイアスだった。ギリシャ人を祖父に持つクオーターにして、赤寄りの茶髪と青い瞳。この情報だけで既にこの代の王になれそうな属性モリモリ男の癖に、やや内気なコイツ。
その、コイツが……。
「あ、あの、違うんだよこれは──」
「ふざけんなっ!」
「ぶぼっ!?」
慌ててなにか弁明しようとするダイアス。その左頬を、俺は容赦なく殴りつけた。
グーで!
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