第7話 英雄とは


「遠い未来って......。それはつまり数年先とかってことですか?」


(俺のとは違うってことだよな?)


 俺が魔眼を使って見える未来は精々数分先までであり、遠い未来が見えるわけじゃない。だから質問せざる追えなかった。それに未来を見た時の代償とかは無いのか。そう言う点も気になってしまった。


「少し違いますね。明確に何年先というより、近々起こりえる未来が見えるってことです」

「??」


 近々見えるミラって何のことだ? 


「リアムさんの未来を見た時は、数カ月後に私の目の前に現れるって言うものでした」

「......。ではあの時、俺が現れるとわかっていたと?」

「はい」

「では、なぜモールト王子は俺の事を怖がっていたのですか?」


 間違いなくワイバーン戦の時、モールト王子は俺の事を恐れていた目で見ていた。今回の一件とは違うが、俺と出会うことが分かっていたということは、俺の事を恐れる理由が分からない。


「本当に申し訳ないのですが、私は魔眼持ちの人を見たことがなかったので」

「......。そう言うことですか」


 結局は魔眼持ちというだけで恐れられる。そう言うわけってことか。


「はい。ですが、リアムさんが何をするかはもうわかっています。これから私が古代文字の場所に案内いたしますのでついてきていただけますか?」

「よろしくお願いいたします」


 そう言っていただけて、非常に助かった。なんせ、竜人族ドラゴニュートは他種族と接点を持とうとしないのを事前に知っていたから、古代文字のある場所までどう入ろうか迷っていたところであったのだから。



 翌日、屋敷から出て三十分程経ったところで、一つの遺跡にたどり着いた。


(ここは、なんというか想像通りって感じだな)


 誰もが一目見たら、遺跡とわかる建築物をしていた。それは、ミシェルとアメリアも思っていたようで、あたり一面を珍しそうに眺めていた。


「こちらが入り口です。どうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 モールト王子が進む方に進んでいくと、一枚の石板を見つけた。


【この世界の理を知っているのか】


(え?)


 いつもと違う古代文字で驚いてしまった。


(世界の理を知っているかだって?)


 そりゃあ、魔族が世界征服しようとしていることは知っているけど、それと世界の理じゃ違うよな......。


 ティターニアが言っていた世界征服は、世界の理の一つに過ぎない。それこそ、世界の理とはもっと違う所にあると思う。だが、ティターニアが言っていたように、魔族が世界征服をしようとして、それを止めようとした精霊たち。


 それはが世界の理につながっているのだとは思う。俺が俯きながら考えていると、モールト王子が肩を叩きながら尋ねてきた。


「リアムさん。この文字が読めますか?」

「あ、はい」

「あまり納得した感じではありませんね。もう一カ所にもありますので次に進みましょう。そこで内容を教えていただけたらと思います」

「わかりました」


 モールト王子に言われるがまま、次の古代文字のありかに連れて行ってくれた。


【英雄が現れた時、俺たち精霊は契約をする】


(......)


 また英雄か。ついさっきもモールト王子が英雄と言っていた。それも俺にだ。


(本当に俺が英雄なのか?)


 モールト王子の言う通り、俺が英雄ならここにいる精霊が現れてくれるに決まっている。


 そう思った時、腕の魔方陣が光出した。俺を含め、ミシェルやアメリア、モールト王子にラルクさん全員が驚きながら見ていた。


{リアム、今から出てくる精霊は少し注意が必要だよ}

{え?}

{はっきり言って、僕みたいに暇つぶしという理由で契約してくれるわけじゃないから}


 シルフがそう言った瞬間、あたり一面に熱風が走って、精霊が現れた。


{君が俺を呼んだってことだよな?}

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