第98話

戦いは終わった。


眼下に超巨大な黒蛇君がとぐろ巻いてじっとしている。

景気よく流れていた歌もピタッと止んでシーンと静まり返ってる。


最初から黒蛇君を放てば試合終了だったと思う。

嫁がけしかけると、足に巻きついていた黒蛇君があっという間にの巨人の上に移動し飲み込んで終わりだった。


ちらっとヒナタを見ると真っ青になって黒蛇を見ている。


あいつ、女子の人権無視のハーレム野郎で、俺が住んでた家を荷物ごと勝手に持って行ったこそ泥野郎で、俺に散々セクハラした糞野郎だったけど、黒い悪魔の時は助けに来たし、そこまで悪党じゃなかったんだけど・・・


絶対死なない主人公レベルの不死性もあったのになんでこんなにあっさり死んじゃうんだ?


「はぁ・・・

 あっという間ではないか。

 つまらんのう・・・

 我の良いところをクロスに見せたかったのじゃがのう」


あれ?

なんかこの嫁ムカつく・・・

なんでだろ・・・


「悪さが出来ないように魂を人形町に定着させるとは、非道い事考えるのう!」


いや、それ、俺がやれって言った訳じゃないし。


「そうじゃ!

 メルマも見つけ出して全員人形に封じ込めよう。

 自称神共は全てこの世界から叩き出し筈なのに、長とあやつはうまく逃げおおせたみたいだからのう。」


いや、いや、たたき出すとか止めろよ。

メルマって確か人違いだったけど、人間族許してって謝ってた。

ハルオの事も助けてって言ってたし、悪い人じゃない。

むしろ良いひとだよ!


「クックック

 あやつらはたっぷりいたぶってやろうかの。」


なんで人を苦しめることが楽しいの!?


「お前、やっぱり、敵!「魔王様ぁあ!!『パシィ!』」・・・」


イオリが当然大声を上げて割り込んできた。

そして無意識の内に嫁を張り倒そうした右手がイオリの顔面を直撃した。


「クロス様!

 痛いじゃないですか!」


「ご、ごめん・・・」


凄いイオリの剣幕に押されて謝ってしまった。

今のは割り込んできたイオリが悪いんじゃ・・・


「いーえ!

許しません!」


「む・・・」


「いいですか、あなた達姉妹が喧嘩すると、私がひどい目にあうんです!」


「イオリ、関係、ない」


「大ありです!

 あなた達が喧嘩したら私が巻き込まれて死ぬんです!」


「巻き、込まない、し・・・」


「私、まだ結婚もしてないのに死にたくないんで、はっきり言ってください。

魔王様の何が気に入らなかったんですか!?」


・・・

・・・

・・・


『話し合うべきデス』


「敗者に、鞭、打つ、命を、粗末に、する・・・

優しさ、微塵も、ない。」


「わかりました!

 私とヒナタさんでしっかり言い聞かせますから、ちょっと別室に行ってくださいね!」


ちらっと嫁を見ると真っ青な石像の様に固まっていた。


何だろ、ちょっと罪悪感を感じるな。


っていうかなんでこんなに頭にきたんだ・・・




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