第99話

相棒に散々嫌みを言われた。


命を粗末するのが嫌なら、嫁と喧嘩するなとか・・・

いきなりキレて嫁を張り倒そうするのは優しくないとか・・・

行動に対する結果をもっと考えろとか・・・


敗者に鞭打つのが嫌なら、俺の方から嫁と仲直りしろと言われた。


どっちの味方なんだ?

っていうか俺、勝ったわけ?


よくわからんが、嫁と喧嘩すると何かあっても助けて貰えないし、なんかものすごい罪悪感が沸いてくるので、仲直りしようと思うのだが・・・


「クロス様。

 この者共はどういたしますか?」


アレクサに案内されたへやには発光体が入ったガラス容器が3つに拘束されたマリアが座っていた。


「どう、する?」


「人神の長、ハルオ、教皇、メルマの魂です」


ガラス容器の魂はあの巨人なんだろうな。

問題はマリアがメルマ様な訳?

俺にどうすると言われても困るのだが。


「マリアがメルマ?」


「違います!」


マリアは全力で否定してるけど?


アレクサはマリアのお腹を指差した。


「腹の中の赤子です」


「え!

 私、妊娠してるの!?」


どうやら、マリア自身も知らなかったようだ。


大人の階段上ったんだね・・・

かなりショックである。


「ルゥイ様はこの者達の処分はクロス様に任せるとおっしゃってます。」


「むぅ」


助けて相棒!

どうしたらいいのか分からない!


『廃棄して転生させるデス』


・・・

・・・

・・・


さて、魂というものを可視化して見る機会なんてそうそう無いだろう。


まずはマリアの解放をお願いしたあと、ガラス容器を持って魂って奴をよく見てみる。


蛍みたいだな。

相棒が廃棄と言っている以上、このまま解放しても危険は無いと言うことだろう。


嫁は俺が決めるみたいな事を言っているが、よく考えたら俺が決める事じゃ無い。


相棒、魂状態で閉じ込められると苦痛とかないかな?


『不明デス』


俺が死んだ後から目覚めるまでの記憶は無いし、たぶん苦痛とかは無いのだろうな。


「メルマと、相談、する」


メルマが生まれるまで待つことにする。


「しばらく、このままという事でよろしいでしょうか?」


頷いた後、部屋をでる。


この後、特にどこかに連れて行かれる事はなかったので、ぶらぶらと散歩する。


「ルゥイ、会う、案内」


アレクサは俺の後をついて来るが、特に話し掛けてこないので案内してくれる様に頼むと、しばらくしてイオリが現れた。


「あー、そのー、魔王様はー

 ちょっと・・・」


「ん?」


嫁、怒ってるの?

やばいな、逃げるか・・・


「悪夢を見たと言ってます・・・

 あはははははは。」


悪夢?


「クロス様に張り倒されそうになった夢を見たと笑っています・・・」


ふむ、夢物語となっているなら好都合かな。


「わかった。

 仲直り、する。」


状況は理解した。

嫁は現実逃避中のようだ。


俺が歩み寄る姿勢を見せた事が良かったのだろう。

イオリは腕を引っ張って案内をしてくれた。


部屋には入ると嫁は水着マント姿で本を読んでいた。


二人掛けの椅子に座るとポンポンと椅子を叩いて横に座るように促されたので並んで座ることにする。


・・・

・・・

・・・


なんか気まずいな。


「悪い夢を見てな・・・

 クロスが我のことを敵だというのだ・・・

そんな事ありえる筈がなかろう」


早速きたーーー。


部屋の中に嫁以外には誰もいない。

嫁はペラリペラリとやけに速いペースで頁を捲っている。


「ルゥイ、お姉様、は、敵、じゃない」


背に腹は代えられん、言いたくはない呼び方だが、今は妥協しておこう。


・・・

・・・

・・・


「もう一回」


あーはいはい。


「ルゥイ、お姉様?」


満面の笑みになり、俺に抱きついてきた。

ちょろい・・・


「新しい種族を作らなかったそうだな」


はい?

相棒、どうゆうこと?


『喜怒哀楽の喜の力デス』


ああ、そんな設定あったな。

完全に忘れてたし、やり方なんて知らんわ。


「作り方、知らない」


「ふむ、相棒に教えて貰ってないのか?」


『あなたは新しい種族を作るにはあまりにも未熟デス』


「未熟、らしい」


「ふっ、確かそうだったな。

 いまだに言葉すらまともに喋れておらぬな。

 ああ、言っておくが、我はもう必要がないから作らんぞ。

 あやつらを助けたいならお主が作ることだ。」


あー、えー、どうゆうこと?


『種を創造するには、魂が必要デス』


つまり、ハルオ達の魂を使って新しい種族を作れと?


『生前の記憶を残したまま創造可能デス』


なるほど、これって新しい体を作って死者を蘇生するということかな。助ける方法あるやん。

で、教えてくれないの?


『あなたは研鑽を怠り、余りにも怠惰。まずはコモン語を話せるようになるデス

話はそれからデス』


怠惰じゃないし!

仕方ない、タヌキュンちゃんの学校にいって教えて貰うか・・・


っと思っていたら、嫁が俺の前に本をどんどん積み上げていく。


「では、早速はじめるかの」


「何、を?」


「コモン語の勉強に決まっておろう。」


えぇぇええ・・・


ヒナタ達みたいになんか魔法的ななにかで覚えられないわけ?


『不可デス』


勉強が終わると夕食を食べ、一緒にお風呂に入った後、就寝となり、キングサイズのベッドの中で完全に抱き枕状態になっている。


あ、相棒、エッチなこと始まるのかな?


お風呂に入るときに貞操パンツをしれっと脱がされて、いまはノーパンなんですけど!


『完全に熟睡しているようデスガ?』


は?

そうなの?


まじかよ!

がっかりである。















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