第89話
カーツウェルさんの剣で吸血鬼の首が飛び、槍が吸血鬼の胸を貫くと内側から爆発したかのようにバラバラの肉片になり飛び散った。
案外弱かった?
黒い球形の物体がふわふわと浮いていて、どす黒い煙が湧き出し地面を這うように広がっていく。
ま、まぁそんな訳ないよね。
「痛っ」
私の体にへばりついた沢山の肉片がピクピクと動き出すと激痛が走った。
「蛭だ! 焼き払うぞ!」
『白炎』
カーツウェルさんが私の腕を引っ張って抱き寄せながら後ろに下がると、白い炎が燃え上がり、蛭を焼き払っていく。
シンジの周りも白い炎が現れ、物凄い勢いで迫っていく蛭の群を焼き払っている。
ただ、ちょっとマユミが私を睨んでいて怖い。
抱き寄せられたのは不可抗力だから!
黒い球形の物体から沸き出すように大量の蛭が吹き出しはじめ、黒い巨大な波のようになって迫ってくる。
「シンジ!
少し時間を作ってくれ!
俺が突破口を開く。
外に出るぞ」
「聖なる光よ!」
シンジの杖がかがやきだすと、蛭の波が霧散していく。
「あまり保ちません!」
「分かってる!」
カーツウェルさんの周りに魔法陣が現れては消えていく。
強力な攻撃を行うみたいね
私も全力で炎と風の魔法を槍に込める
「いくぞ!」
カーツウェルさんが白いオーラを纏いながら黒い蛭の波に突入すると、マユミはシンジを抱えて後を追う
最後に私が追いかける。
「ぐわぁあああああ!」
地面に溢れかえる蛭の固まりを抜けたところで、何かにはじき返されたカーツウェルさんが飛ばされてきた。
カーツウェルさんを受け止めると暖かい血が胸から吹き出してる。
「シンジ早くカーちゃんを!
こいつは私がやってやるぅ!」
シンジをこっちに向けて放り投げた後、3メートルはある四本腕の巨人にマユミが向かって行った。
「俺は大丈夫だ!
ヒナタは後ろ頼む」
とても大丈夫には見えないけど、ポタポタと血を流しながら立ち上がる。
「ボールドォ、こいつらは喰って良いんだなぁあ」
「すきにすれば良いですが、この槍を持った娘だけは殺してはいけませんよ」
蛭の群の中から吸血鬼が表れて私の方を見てニヤリと笑うと寒気がしたので、私は吸血鬼の方に向けて炎と風の力の魔法『炎の嵐』を放つと普段よりも強力な炎が蛭の群と一緒に吸血鬼も迷宮方向に吹き飛ばし焼き払う。
「ヒナタすごい・・・」
何故か調子が良い。
いつもより各段に威力が上がっている。
「あのデカ物は私が引きつけるから、マユミと外に出て」
シンジは感心しているが、あの吸血鬼はあの程度の攻撃で倒せるとは思えない。
それにいま私をころしてはいけないと言っていた。
「いや、ヒナタはシンジを連れて外に出ろ。
俺が4本腕を倒す」
「えぇ!まだ無理ですよ!」
「俺は頑丈なだけが取り柄なんだ!
いくぞ!」
シンジが止めたが、カーツウェルさんが一気に4本腕の巨人に近づき切りかかった。
シンジも器用に走りながらバブをかけていく。
私もシンジを守りながら巨人を避けて外に出ると巨大な金色のドラゴンと無数の吸血鬼が待ちかまえていた。
「ボールドの姿が見えませんな」
「せっかく妾が迎えにきたのに、あやつは何をしておるのじゃ?」
ドラゴンと吸血鬼が私を見ながら話している
「巨大なドラゴンに吸血鬼の群・・・ 無理・・・」
シンジは腰が抜けたかのようにへなへなと尻餅をついた。
「諦めたらダメよ!
しっかりしなさい!」
槍を構え炎と風の魔力を込めると、ドラゴンの視線が私の後ろに向いた。
「スペルガン、貴様だけか?
ボールドはどうしたのじゃ?」
「しらん!
迷宮の中入っていったぞ?」
巨人が血塗れのマユミとカーツウェルさんを掴みながらダンジョンの入口から出てきた。
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