230話 ブリケード王国からの使者

「なに? ブリケード王国から使者が?」


 俺が支配している『聖竜帝国(ホーリードラゴン・エンパイア)』。

 その宮殿の謁見の間で、俺は宰相のアイシャから報告を受けていた。


「はい。何でも、同盟関係を結びたいという話です。如何なさいましょうか?」


 アイシャは冒険者ギルドの元職員だ。

 ギルマスの娘であり、ただの人間にしては隠密行動能力や事務処理能力に優れていた。

 俺から竜の加護を受けている今、その能力はさらに増している。

 宰相としてもやっていけるだろう。

 今は前宰相を補佐として付けているが、そう遠くない内に不要となるはずだ。


「使者をここへ通せ」


「畏まりました」


 アイシャは恭しく一礼した後、謁見の間を退室する。

 しばらくすると、謁見の間の扉が開いて、ブリケード王国の使者が入ってきた。

 使者としては少し珍しいことに、女性だった。


「お初にお目にかかります。私はブリケード王国からの使いで参りました」


 女性使者は丁寧な口調で、俺の前まで歩いてくる。

 そして、仰々しく礼をした。


「遠路遥々よく来たな。しかし、言葉は正しく使え。俺とお前は初対面ではないだろう?」


 俺は使者に対して、皮肉交じりに言う。

 すると、使者はビクッと肩を震わせた。

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