225話 ナタール連邦の最期-4

「な、何をするつもりだ!?」


「いや、待て……っ! アレは……!!?」


 窓から外の様子をうかがった王たちが、驚愕に目を見開く。

 そこには、1匹の巨大な竜が飛んでいた。

 それが手に持つクリスタル――『紅血の水晶石』の元となる物体――に、王たちの血液が吸収されているらしい。

 いや、正確には王たちの血液だけではない。

 街の、国の至るところから、血液が吸い上げられているようだ。


「お兄ちゃんに手を出したのが、お前らの運の尽きだぜ」


 ガルドは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 そもそものことを言えば、ナタール連邦に協力を要請したのはガルドなのだが……。

 彼は完膚なきまでに叩きのめされた上、性器を潰され、未完成エリクサーによって性転換され、強制的に竜の加護を与えられた。

 その結果として、もうすっかりライルの言いなりになっていた。


「「「…………ッ」」」


 王たちは絶句している。

 すぐ近くには、殺された王の死体が転がっている。

 その上、街・国の至るところから血液らしきものが吸い上げられているのだ。


 まさに異様。

 恐慌状態に陥ってもおかしくない光景は、王たちの心を折ったようだ。

 彼らは畏怖の感情と共に、赤いドラゴンを仰いでいた。


『グルルオオオオッ!!!』


 赤い竜の雄叫びが、ナタール連邦中に響く。

 その咆哮を受け、王や民衆たちは、ただ怯えることしかできなかったのだった。

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