203話 第一王子ライルに告げる

「くく……。追放した第一王子が覚醒したという事実がそんなに怖いかね? たった1人の身柄を拘束するために、2か国から兵を出して……まったく滑稽だな。ははっ!!」


 ここはナタール連邦の領地だが、ブリケード王国兵も進軍してきている。

 普通に考えて、他国の兵を自国内に入れるのは非常に危険だ。

 だが、今回は『ブリケード王国の元第一王子ライルを確保する』という大義名分がある。

 そこに国力差を背景にした圧力も加わり、ナタール連邦は軍の進入を受け入れざるを得なかったといったところだろう。

 ストレアの周囲に陣取っている兵は、およそ1000人。

 主戦力であるブリケード王国兵と、それを支援する形で来ているであろうナタール連邦軍の混合部隊だ。


「わ、笑っている場合ではないぞ……。ライル君! 今からでも遅くない! 君がブリケード王国に帰ってくれさえすれば、全てが丸く収まるんだ……!!」


「それでは面白くないだろうが」


「面白いとか楽しくないとかの問題じゃない!! このままでは、ストレアごと滅ぼされてしまう……!!」


 ギルマスの顔は本当に必死そのもので愉快だ。

 まぁ、彼からすれば巻き添え以外何もないのだから、そう考えるのは当然か。

 俺たちがそんな会話をしていると――


『第一王子ライルに告げる!!』


 拡声魔法により、男の声が響き渡った。

 聞き覚えのある声だ。

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