176話 愛のムチ

「人には序列というものがある。下位者が上位者に逆らうなど、あってはならないことだ」


 そう告げた後で、俺は再びムチを振るう。

 今度は尻だ!

 パァンという乾いた音が響き渡り、同時にキーネから悲鳴が上がる。

 少しして落ち着いた彼女は、息も絶え絶えに言う。


「ど、どうしてですか……。私は、ご主人様の忠実なペットで……」


 もうすでに目尻に涙を浮かべているキーネ。

 そんな彼女を見下ろしつつ言う。


「確かにそうだ。お前は俺に対して忠実である。しかし、逆はどうだ?」


「逆……ですか?」


「お前よりも下の者――雌豚奴隷メスタに対して、お前はどう振る舞っていた?」


「えっと……。昔は仲間で、私よりも少しだけ先輩でした。だから、今回もできるだけ丁寧に――」


 そこまで言って、彼女の言葉が止まる。

 いや、止められたのだ。

 俺のムチによって。


「あぎゃぁあああっ!!」


 悲鳴とともに背中を抑えるキーネ。

 俺は淡々とした口調で続ける。


「それが間違いなんだ。上位者が下位者に気を使う必要などない。むしろ、積極的に躾けるべきなんだ。昔はどうあれ、今は明確な立場の差があるのだからな」


 その言葉にハッとした表情を浮かべるキーネ。

 どうやら分かってくれたみたいだな。

 俺の愛のムチが効いたのだろう。

 彼女を見て、俺はニヤリと笑うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る