81話 シルバータイガー? 何のことだ?
俺は冒険者ギルドにて、パーティを結成した。
パーティ名は"聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)"だ。
俺、リリア、キーネ、その他4人のBランクパーティである。
「ライルさん。これで、高ランク冒険者向けの情報を提供できるようになりました」
「ああ、そうだな」
冒険者ランクは、S、A、B、C、D、Eの6段階がある。
そして、依頼の達成難易度や魔物の討伐難易度にも、同じように6つの段階が設定されている。
低ランクの者が高ランクの依頼や魔物討伐に挑戦すると、場合によっては命の危険すらある。
そのため、ある程度は情報が統制されている。
個人としてもパーティとしてもBランクとなった俺には、より幅広い情報が開示されることになる。
「良かったですね! ライルさんが当初から追っておられた情報を提供いたしますよ!!」
受付嬢が満面の笑みを浮かべて言う。
俺たちの冒険者としての実力が評価されたことは、俺も嬉しく思う。
まぁ、それはさておき――
「俺が当初から追っていた情報? 何のことだ?」
「え? ですから、シルバータイガーのことですよ。B級危険種に指定されている、あの強力な魔物です」
「シルバータイガー? 何のことだ?」
「ええっ? あの、”白銀の大牙”を探しておられるのですよね?」
「…………?」
「ライルさん?」
「……?」
「もしもーし?」
「…………」
何だ?
何か、大切なことを忘れているような……。
思い出せん……。
そのとき、頭の中に1つの情報が思い浮かんだ。
『極滅魔法ディザスター・ストームの発動方法について――』
ほう……。
これは興味深いな。
S級スキル竜化が覚醒してからというもの、こうして次々に新たな力に目覚め続けているのだ。
俺の進化は留まるところを知らない。
……ん?
あれ?
今、俺は何かを考えていたような気がするのだが……。
「もしかしなくても、記憶喪失ですかぁ~?」
受付嬢が困惑した様子で言う。
ああ、そうだった。
”白銀の大牙”がどうとかいう話か。
「……よく分からんが、俺はそんなものを探してはいない」
「あれぇ? でも、ライルさんの冒険者登録時の備考欄に書いてあったはずですけど。……ほら、ここに」
受付嬢が1枚の紙を取り出して見せてくる。
確かに、登録用紙の備考欄にはそんな記載がされている。
書類を偽造されたのでなければ、俺は”白銀の牙”とやらを求めていたのだろう。
「……これはいかんな。想定以上に”真覚醒”が早い」
「リリア?」
俺の隣で、リリアが真剣な表情をしている。
「ライルよ。少し痛むが、我慢するがよい」
リリアはそう言って、右手を俺の頭に添える。
「え? ――ぐあああぁっ!?」
「……ほう。やはり」
「……あ……が……」
頭が割れるように痛み始める。
そして、俺の意識は薄れていったのだった。
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