80話 聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)

 キーネの元仲間たちを奴隷として屈服させた一週間後――


「え、ええっと……。ライルさんとリリアさん、それにそちらの5名でパーティを組むと?」


 受付嬢が困惑した様子で言う。


「ああ、そうだ」


 俺はそう答える。

 この一週間で、キーネを含めた5人には竜の加護を与えている。

 男のケツに入れるのは少し抵抗があったが、何事も経験だ。

 リリアやキーネがとても興味深そうに見ていた。


 5人に与えた加護は、強弱で言えば弱い方である。

 だが、それでもそこそこ戦えるはずだ。

 キーネは調教済みだし、他の4人とは奴隷契約を結んでいる。

 俺の言うことであれば自らの死もいとわず実行に移すだろう。

 それなりに便利な手駒ができたというわけだ。


「そ、それじゃあ、ギルドカードをお願いします」


「はいよ」


 俺たちは受付カウンターで手続きを済ませていく。

 俺は盗賊退治の功績でBランクに昇格済みだ。

 リリアはCランク。

 また、キーネたち5人組もそこそこ程度ではあったらしい。

 リーダーとキーネはCランク、その他の3人はDランクである。

 まとめると、Bランク1人、Cランク3人、Dランク3人の大型パーティとなる。


「ライルさん、おめでとうございます!」


「ん? 何がだ?」


「ライルさんの個人ランクはBランクに昇格済みですが、今回のパーティ編成の変更によって、パーティランクもBランクとなりましたよ!」


「おお、それはすごいな! ありがとう」


 俺は素直に感謝の言葉を述べる。


「いえ、これもギルドの務めなので」


 Bランクになれば、国や領主からの依頼を受けることも可能になる。

 俺にとってかなり都合の良い展開だ。


「パーティ名などはいかがいたしましょうか?」


「うーん……」


 どうしたものか。

 ”紅の戦士団”とか”ストレアの守り手”とかそんな感じの名前にするべきだろうか?

 ……ダサいな。

 却下だ。


「そうだな……。"聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)"でどうだろうか?」


「わぁっ! カッコいいですね!」


「うむ。余らに相応しい名前であろう」


 キーネが目を輝かせ、リリアも太鼓判を押す。


「では、これで頼む」


 俺は2人の反応を受け、受付嬢にそう依頼するが――


「え? 本気ですか?」


「ん? 何か問題があるのか? せっかく、俺の考えた最高最強のパーティ名なのに」


 残念だ。

 非常に残念だ。

 このネーミングセンスが彼女には理解できないようである。


「……ほら、そちらの4人も微妙そうな顔をしていますし」


 受付嬢が言うように、リリアとキーネ以外の4人の顔が引きつっている。

 こいつらは俺の奴隷なので、どうでもいいと言えばどうでもいいのだが……。

 一応、意見ぐらいは聞いておいてやるか。


「なあ、カッコいいよな? "聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)"」


「……ええっと。正直ダサ――ごふっ!?」


 1人が答えようとするが、隣の奴に肘鉄を食らう。


「……ぜ、全然。むしろ、控えめで素晴らしいと思いますぅ。ね、ねぇ、みんなぁ?」


「トテモすばらしいとオモイマス」


「カッコいいナマエだぜ」


 女に話を振られて、残りの2人は必死にコクコクと首を縦に振る。


「そうか? 俺としては、もっと派手な名前でも良いかと思うんだが――」


「い、いえ! それでお願いします。ねっ!」


 女が力説する。

 俺としては少し物足りない気がしたが、ここは彼女たちの意見を尊重してやるか。


「よし、じゃあそれで決定だ。頼んだぞ」


 こうして、俺たち7人は"聖竜の勇者たち(ホーリードラゴン・ブレイブズ)"を結成したのだった。

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