74話 断ることは許さん

 キーネの元仲間たちに、とある提案を行うところだ。


「知っての通り、俺も冒険者として活動している。だが、パーティメンバーは俺とリリアの2人だけなんだ」


 盗賊団の討伐時には、ストレアのギルド職員アイシャや、村の少女ミルカも伴っていた。

 だが、アイシャは通常業務に戻っているし、ミルカは村に置いてきた。

 俺のパーティは、元通り2人だけになってしまったというわけだ。


「……それで?」


 男が尋ねてくる。

 その表情には警戒心が浮かんでいた。

 だが、問答無用で襲いかかってくることはない。

 先ほどの攻防で、実力行使では俺に敵わないと理解したのだろう。


「理解の遅いやつだな。この奴隷の首輪を付けろ。そうすれば、俺のパーティにお前らを入れてやる。またキーネと一緒に冒険者活動ができるぞ」


「「「なっ!?」」」


 3人が驚愕する。


「さすがにそれは……」


「いや、しかし……」


「その話は断らせてもらうわ!」


 多少の温度差はあるが、全員が戸惑うか、あるいは拒否している。

 彼らにとってキーネは大切な仲間ではあるが、自らを奴隷として差し出すほどでもないというわけか。


「悪いが、奴隷の首輪は全員分ある。断ることは許さん」


「ふざけるな! 俺たちにだって自由はあるんだ!!」


「そうよ! あなたの言う通りになんか絶対にならないから!!」


「こうなったら、出るところに出て……」


 喚く3人を無視して、俺は奴隷の首輪に魔力を込める。

 そして、俺が先ほどまで人間ハンマーとして利用していた男の首に押し当てる。


「ふんっ! バカが。奴隷の首輪は、対象者の合意がないと――ッ!?」


 リーダー格の男が喋り終わる前に、奴隷契約が成立したようだ。

 気絶している男に、首輪が無事に装着される。


「対象者の合意は絶対的なものではない。魔力や存在の”格”の違い次第では、こうして合意なしでも奴隷契約は結べるのさ」


 S級スキル【竜化】を持つ俺ならではの芸当ではあるけどな。

 さすがに、多少強い程度の奴らが好き勝手に奴隷契約を結べれば、社会が崩壊するし。

 さぁ、お次は誰を奴隷にしてやろうか?

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