20話 あの少女は今
ライルたちがストレアで冒険者登録を終えた頃ーー。
『雪原の霊峰』から下ったところにある、とある山村付近にて。
少女が、大きな魔物を軽々と担いで歩いている。
彼女はそのまま村に入っていく。
「お父さーん。今日もたくさん狩ってきたよー!」
少女がそう叫ぶ。
彼女は、ライルによって竜の加護が与えられた少女だ。
村の外には、数こそ多くはないが強力な魔物が徘徊している。
特に、『雪原の霊峰』方面には登れば登るほど魔物も強くなる傾向がある。
本来であれば、少女1人で村の外に出るなど危険極まりない。
しかし、ここ最近の彼女は平気で村の外に出ている。
「む? お、おお……! 今日はまた、一段と多いな……」
少女の父親が驚嘆した表情で、そう言う。
少女は魔物をたくさん狩り、村まで持ち帰ってきたのだ。
もちろん、ただの少女がこれほどの魔物を狩ることは通常であればあり得ない。
ライルから与えられた竜の加護の恩恵である。
増強された身体能力や魔力を使い、近隣の魔物相手に無双しているのだ。
「あらまあ。この娘は、いつの間にこんなに強くなったのかしらね……」
少女の母親がそう言う。
ライルの竜の加護の件は、少女の両親はもちろん、少女本人にも伝えられていない。
「ライル様のおかげだよ。ギガント・ボアの肉で、すっかり元気になったからね」
少女は、流行病により長い間病床に伏せっていた。
症状が改善したのは、栄養と魔力がたくさん含まれているギガント・ボアの肉をたくさん食べたからである。
その後も体調が改善し続け、その上戦闘能力まで向上しているのは、竜の加護の恩恵であるが。
「確かにな。今の俺たち一家が幸せに暮らしているのは、ライル様のおかげだ」
「そうだねえ。また会うことがあれば、お礼をしたいねえ」
少女の両親がそう言う。
「うん。次に会える日が来れば、たくさんお礼がしたいな。それに、私の子どもが安心して暮らせるように、この村をどんどん発展させていくよ!」
少女がそう言う。
彼女とライルがやることをやってから、それほどの月日は経過していない。
だが、彼女は自分がライルとの子どもを授かっていることを確信していた。
抜群の身体能力と魔力のおかげで、彼女は高い戦闘能力を誇る。
このような山村において、高い戦闘能力は特に重宝される。
村の中での少女の発言力は、急速に高まりつつある。
現村長やその息子などはやや複雑な心境であったが、それ以上に村に強力な戦力が誕生した安心感のほうが大きい。
この村は、今後も安定して発展していくことになる。
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