13話 村から出立/ストレアへの道中

 チュンチュン。

 朝になった。


「うーん……。よく寝たな……」


 俺は爽やかに目覚める。

 昨晩は夜の運動会も開いたことだし、適度な疲労感とともにぐっすり眠ることができた。


「zzz……。ライル様……」


 俺の隣では、少女が全裸でぐっすりと眠っている。

 初めてだったそうだが、何とか満足してもらうことができたようだ。


 俺は眠っている少女を横目に、朝の支度を済ませていく。

 しばらくして、彼女も目を覚ました。


「ふぁああ……。おはようございます、ライル様」


「ああ、おはよう」


 俺はそうあいさつを返す。

 少女も、朝の支度を済ませていく。


「ところで、体の調子はどうだ?」


「体の調子ですか? 特に変なところはありません。お股のところに少し違和感がありますが……」


 少女がそう言う。

 それは、今回初体験を済ませたからだろう。


「それ以外に何かないか?」


「ええと、そうですねえ。何だか、体の調子がいいような気がします。ギガント・ボアをたくさん食べたから……? もしくは、ライル様に愛していただけた高揚感からでしょうか」


 少女がそう言う。


「そうか。体の調子がいいのは、何よりなことだ」


 リリアが言っていた竜の加護とやらは、確かにこの少女に付与されたようだ。

 彼女の気のせいとかでなければ、間違いないだろう。

 少し過酷なこの村での生活でも、竜の加護があれば幸せに生きていけるはず。

 これで、安心してここから離れることができるな。


 俺は思考を巡らせる。

 そんな俺を見て、少女が口を開く。


「ライル様? もしかして……」


「ああ。今日にでも、この村を出発しようと思っていてな。君を1人にしてだいじょうぶかと思っていたのだが、その様子だとだいじょうぶそうだな」


「体は元気です。でも、敬愛するライル様と離れ離れになるのは、胸が張り裂けそうです……」


 少女がションボリした顔でそう言う。

 俺がこの村にずっと留まるつもりがないのは、以前から伝えている。


「そう言うな。また来ることもあるだろう。それまで元気にしていてくれ」


「はい……。いつまでもお待ちしております」


 少女がそう言う。

 少し重いな……。

 村で好きな人ができたらそっちとくっついてくれてもいいんだが……。


「まあ、あまり重く考える必要はないぞ。体の調子は良好のようだし、俺も安心して旅立てる」


「ええ。くれぐれもお気をつけて」


 そんな感じで、少女とは別れを告げた。

 さらに彼女の両親や村長たちにも別れを告げ、リリアとともに村を出立した。


 最終目的地は、シルバータイガーの生息域。

 その情報収集のため、まずはその近くの街に向かうつもりだ。


 俺とリリアで、歩みを進めていく。



--------------------------------------------------



 村を出立して、数日が経過した。

 襲ってくる魔物たちを軽く討伐しつつ、足早に街へ向かっているところだ。

 そしてーー。


「お? あれが目的の街じゃないか?」


「そのようじゃな。あれがここらで一番大きな街である”ストレア”じゃ」


 リリアがそう言う。

 確かに、かなり大きな街のようだ。

 街の周りには、ぐるっと囲むように塀が設けられている。

 あれで、魔物の侵入を防いでいるわけか。


 俺たちが引き続き街へ向けて歩みを進めているときーー。


 ヒヒーン!

 ガラガラガラッ!


 馬の鳴き声と、馬車の車輪の音が聞こえてきた。

 俺とリリアの斜め後ろぐらいからだ。

 何となく、慌ただしい気配を感じる。


「なんだ?」


 俺は振り向き、様子をうかがう。

 やはり馬車だ。

 ずいぶんと飛ばしている。

 御者の男は必死の形相で、馬を走らせている。


「むっ!? そ、そこの君たち! ここは危ないぞ! 後ろからゴブリンたちが……」


 御者の男がそう言う。

 俺とリリアは、馬車の後方を見る。


「ふむ……。確かに、ゴブリンどもの群れが追っているようじゃの。どうする? ライルよ」


「もちろん、蹴散らしてくるさ。見殺しにするのも後味が悪いし、このままだとどの道俺たちに標的を変更するかもしれないし」


 俺は戦闘体勢を整える。

 御者の男に声を掛ける。


「そのままここを突っ切れ。ゴブリンどもは俺が何とかしてやる」


「す、すまない。助かる! くれぐれも気をつけてくれ」


 御者の男がそう言う。

 そして、俺の言葉に従って俺の横をそのまま通り過ぎていった。


 少しして、ゴブリンどもも追いついてきた。


「ギャウッ!」


「ゴアアッ!」


 やつらが俺を威嚇してくる。

 ゴブリンはD級の魔物だ。

 ゴブリン1匹は、一般の成人男性1人と同じくらいの戦闘能力を持つ。


 ゴブリン1匹を安全に討伐するには、一般の成人男性複数名か、D級の冒険者が必要となる。

 10匹以上のゴブリンの群れを撃退するには、たくさんのD級冒険者か、C級冒険者が複数名必要だ。

 ソロでゴブリンの群れを撃退するのは、基本的には難しい。


 しかし、それはもちろん一般的な冒険者たちの常識であればだ。

 俺はS級スキルの竜化を持つ。

 A級のギガント・ボアですら俺は軽く蹴散らすことができる。

 ゴブリンの群れごとき、敵ではない。


 肉弾戦で戦っても一蹴できるだろうが、ゴブリンは不潔な魔物だ。

 ここは、魔法で倒すことにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る