初体験後の朝

「んん……」


 初体験を終えた次の日の朝、隆史はまだ眠気があるも目を覚ました。


 姫乃は寝息を立てており、まだしばらく起きなそうだ。


 徹夜した後に観光をしたし、その後には抱かれたから起きなくても仕方ないだろう。


「しちゃったんだよね……」


 腕の中で寝ている姫乃を抱いたことを思い出し、隆史の身体は熱くなる。


 初体験のことは今後忘れることはないだろう。


 布団には少しの血がついてしまったが、旅館の人たちから何か言われないことを願うのみだ。


「やぁん……タカくん、こんなとこでなんて、大胆ですよ……」


 寝言が聞こえた。


 この寝言だけでどんな夢を見ているのかは容易に想像出来るものの、深く考えるのは止めておく。


 初体験で女性を抱く気持ち良さを知ってしまったため、想像したらまたしたくなってしまうからだ。


 姫乃は昨日初体験を終えたばかりだし、時間があまりたってないからまたするのはしんどいだろう。


「でも、タカくんが望むなら、いつでもいい、ですよ」


 どうやらいつでも抱いていいらしい。


「俺のことをこんなに愛してくれてありがとう」


 寝ている姫乃の耳元に顔を近づけてそう呟く。


 一ヶ月もしないで他の女の子を好きになるのは姫乃からしたら軽蔑対象かもしれないが、それでも彼女は好きになってくれた。


 しかも未経験の彼女が抱かれることを望んだのだし、それくらい好きになったということだ。


 本当に嬉しさしかないし、一生愛し続けられる自信がある。


「んん……タカ、くん?」


 耳元で声が聞こえたからか、姫乃が目を覚ました。


「おはよう、姫乃」

「おはよう、ございます」


 あう……と頬を真っ赤にした姫乃は、昨日のことを思い出したのだろう。


 それにエッチな夢を見ていたようだし、恥ずかしくなっても仕方ないかもしれない。


「夢でも俺に抱かれたの?」

「な、なななな何でそれを?」


 恥ずかしさが限界に到達したのか、姫乃は隆史の胸に顔を埋めさせた。


 エッチな夢を見たのがバレたのだし、相当恥ずかしいのだろう。


「寝言でこんなとこでなんて大胆……」

「これ以上は言わなくて大丈夫です」


 口を手で抑えられたため、これ以上言うことが出来ない。


「タカくんに抱かれて、凄く幸せだったんですもん。見てしまっても仕方ない、です」


 胸に顔を埋めているから分からないが、頬を赤くしながらも口元は緩んでいるだろう。


 好きな人に初めてを捧げられるのは、女性にとって幸せということだ。


「だから私から離れちゃやぁです」


 物凄く甘い声だった。


 永遠に離したくない、と言いたいも、口元を抑えられているから上手く喋れない。


「あ、すいません。これじゃあ話せないですよね」


 ようやく離してくれたため、数十秒ぶりくらいに息をする。


 口を抑えられている時に手を舐めてみたい、と思ったのは内緒にいておく。


「もちろんずっと離れないから」


 ギュっと姫乃の頭と背中を抑えて離さない。


 好きな人にこんなに愛されて離れたいと思う人は中々いないだろう。


「なら私の身も心も、これからの時間も全て……タカくんのもの、です」


 ヒョコ、と胸から顔を出してきた姫乃からの衝撃な言葉だった。


 初めて恋をしたから少し暴走しているだけだろうし、しばらくしたら落ち着いてくるだろう。


 一緒にいる時間は幸せだから離したくないが。


「好きな人にこんなに愛されて私は幸せ者ですね」

「俺も幸せ」

「んん……」


 姫乃とおはようのキスをした。

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