箱根観光は幸せしかない
「眠い……」
全く眠れなかった影響で今更睡魔に襲われているが、隆史は彼女になった姫乃と一緒に手を繋ぎながら箱根を歩いていた。
土曜日だから観光客と思わしき人たちが多いものの、今はとても幸せだから苦ではない。
最愛の彼女と手を繋ぎながら箱根デートを満喫出来るのだから。
旅館の部屋は少し空いているようなのにこんなに人が多いのは、日帰りで箱根を満喫するからだろう。
県内だったら日帰りでも比較的満喫出来るし、一部の旅館は温泉だけを満喫出来るプランもあるとのこと。
日帰りでも箱根の温泉を満喫出来るのなら、来たい人は来るのだろう。
「寝ちゃダメ、ですよ」
せっかくのデートで眠いと言われたからか、姫乃は「むう……」と頬を膨らませて不満そうな顔をした。
デート中に眠いと言われたら嫌だろう。
「大丈夫。絶対に寝ないから」
「あ……」
記念すべき初デートで寝るわけにもいかず、隆史は眠気を飛ばすために姫乃を自身に引き寄せた。
今までは学校の人たちに付き合っていると思わせるために何度か人前でくっついたことがあったが、箱根にいる今はこんなことをする必要はない。
だけど付き合い初めてからさらにイチャイチャしたい衝動に襲われている。
まだ二日目なのにガッついていると思われるかもしれないが、我慢しなくていいと言われたし、本当に嫌ならダメ言ってくるだろうから問題ないだろう。
「タカくん……」
付き合えた嬉しさで周りに人がいるのを忘れているようで、姫乃は胸板にグリグリ、と頬を押し付けた。
恋は盲目というのは本当らしい。
あの恥ずかしがり屋の姫乃が人前でこうもくっついてくるのだから。
チラチラ、とこちらを見てくる人たちは「午前中からこうもイチャイチャしやがって……バカップルめ爆発しろ」などと思っているだろう。
でも、恥ずかしくてもイチャイチャを止めたいとは微塵も思わない。
彼女とイチャイチャしたいと思うのは当たり前のことなのだから。
カップルで観光に来ている人たちもいるようで、恐らく二人きりの時はイチャイチャしまくりだろう。
「いっぱい観光しようね」
「はい」
抱き合うのを止めて、観光を満喫するために手を繋ぎながらあるき出す。
箱根といえば黒い温泉たまごや黒いアイスクリームなどの食べ物、無料で浸かれる足湯などが有名で、それ目当てでくる人たちもいるだろう。
今日の姫乃は昨日と違って膝下まである爽やかな白いワンピースだが、裾を膝上までま繰り上げれば足湯を満喫することが出来る。
朝ご飯は旅館で食べてきたし、まずは有名な足湯に浸かるのがいいかもしれない。
てなわけでスマホの地図アプリで調べた足湯スポットに向かった。
☆ ☆ ☆
「気持ちいいですね」
「うん」
早速二人して足湯に手を繋ぎながら浸かる。
元々足湯に浸かる予定だったからゆったりとしたジーンズを履いてきたため、膝上まで楽に捲り上げることが出来た。
姫乃はワンピースを膝上まで捲り上げているが、袖をきちんと足で挟んでいるから下着が見えることがないだろう。
「今の私は凄く幸せです」
コテン、と姫乃は隆史の方に頭を乗せてきた。
今までも沢山感じていた甘い匂いがさらに強くなる。
「俺もだよ」
付き合い始めて幸せを感じない人はいないだろう。
このまま永遠にイチャイチャしていたいほどに幸せだ。
「良かったです。じゃあ永遠に離しませんから」
本当に離したくないようで、さらに強く握ってきた。
こんなにも想われているのだし、本当に幸せしか感じない。
前みたいに慰め合う関係ではなく、今イチャイチャするのは幸せを感じるためだ。
麻里佳が手を繋いできたから好きな人と触れ合える幸せは分かっていたが、姫乃とイチャイチャすると麻里佳の時より段違いに幸せを感じられる。
節操が無さすぎるのは駄目だが、これからはあまり本能を抑え込まなくて済む。
むしろ理性で本能を抑え込もうとするも、姫乃が嫌がるだろう。
「なら姫乃に相応しい男にならないとね」
白雪姫と言われるくらいに美しい容姿、学年屈指の学力と運動神経の持ち主の姫乃に相応しい男になると、これからかなり努力しなければならない。
だけど最愛の彼女のために頑張るのであれば苦ではなかった。
「もうなってますよ。それに周りからは何も言われてないじゃないですか。認められてるんですよ」
確かに嫉妬されはするが、面と向かって別れろなんて言われていない。
ただ、誰と付き合おうと人の自由なため、言われても離れるつもりはまったくないが。
ただ、付き合えてもまだ釣り合うとは思っていないので、これからはきちんとするつもりだ。
見た目から入るのもいいだろうし、来週は服を買うのもいいかもしれない。
「でも、タカくんが頑張るなら私は応援しますよ」
「ありがとう」
幸せを感じながらこれから頑張ることを決めた。
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