白雪姫が蕩ける

「広い……」


 旅館に着いてチェックインして部屋に行くと、豪勢な和室だった。


 二人で泊まるにはかなり広く、部屋の外には露天風呂がついていて、一般の人が泊まるには豪勢だ。


 ちなみに観光は箱根に着いたのが夕方くらいだったため、明日しようということになった。


 箱根までかなりの距離があるからしょうがない。


 でも、明後日までいるから明日は一日中観光を楽しめる。


「そうですね」


 ふふ、と笑みを浮かべた姫乃も、ここに泊まれるのは嬉しいようだ。


 夕飯までは時間があるからキャリーバッグを部屋の隅に起き、テーブルの前に腰掛ける。


「では、失礼しますね。旦那様」


 新婚旅行の体もあるから二人きりの時は旦那様と呼ぶことにしたらしい姫乃は、頬を赤くして隆史の膝の上に向かい合うようにして座った。


 この座り方は恥ずかしさはあるものの、姫乃の感触を沢山感じられるから好きだ。


 もちろん手を繋いだりする他のイチャイチャも好きで、もっと沢山触れ合いたい。


 向かい合うようにして座ると視線が同じくらいになり、お互いのおでこをくっつけて愛を確認するかのように見つめ合う。


 もうお互いの気持ちに気付いているのだし、たまにこうして愛を確かめるのもいいかもしれない。


 むしろずっとこうやって見つめていたい気持ちすらある。


「んん……」


 見つめ合っていると距離が近づき、唇が自然と触れ合う。


 何度しても最高な気持ちになるキスを止めることなど不可能だ。


 出来ることならご飯を食べる時間までしていたい。


「旦那、様……」


 だけどずっとキスをしているのは不可能で、息継ぎのために一度離れた。


 他の人はどうだが分からないが、隆史はキスの時に息を止める。


 それは姫乃も同じらしく、少し長いキスをすると彼女は息を整えるようだ。


 ただ、今日は旅行という特別だからか、若干蕩けたような顔をしている。


 しかももっとキスをしてほしいかのような表情だ。


「んん……」


 物欲しそうにしているのだからしないわけにもいかず、再びキスをする。


 まだ付き合っているわけではないからディープキスはしないが、普通のキスでもやはり理性が削られていく。


 甘い声や吐息、唇の柔らかな感触が原因だろう。


 しかも唇以外にも姫乃の柔らかな感触があるため、このまま押し倒してもおかしくない状況だ。


 むしろこの状況で理性が削られない男は皆無だろう。


「こんなにキスすると、ヤバいです」


 蕩けたような表情の姫乃も、少しながら理性が削られてしまっているらしい。


 女性にも性欲はあるのだし、キスで興奮したっておかしくはないだろう。


 一度スイッチが入ると女性の方が我慢出来なくなるらしいが、姫乃が襲いかかってくることは皆無だと断言出来る。


 まだ経験はないのだし、エッチなことをするよりこうやってイチャイチャする方が好きそうなのだから。


 ただ、好きな人に抱かれる幸せを覚えたらこの限りではないかもしれないが。


「もう少しヤバくなってもいいんじゃない? せっかくの新婚旅行だ」


 本当の新婚旅行ではないにしろ、新婚旅行なら基本的に我慢をする必要はない。


 むしろ自分にしか見せない蕩けた表情をもって見せてほしいほどだ。


「それは旦那様もですよ」

「俺も?」

「はい。式部さんには見せない、私だけに蕩けた表情を見せてください」


 どうやら姫乃も同じ考えらしい。


 でも、物凄く恥ずかしいようで、髪の隙間から見える耳まで真っ赤になっていた。


 蕩けた表情が見たい、つまりは濃厚なイチャイチャをすることになるのだし、恥ずかしくても仕方ない。


「止められなくなるよ?」

「いい、ですよ。だって新婚旅行ですから」


 お互いに腕を背中に回し、さらに密着してキスをした。

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