白雪姫とテスト前日の朝

「んん……」


 カーテンの隙間から漏れ出る朝日、鳥の鳴き声で隆史は目を覚ました。


 腕の中には最近当たり前になってきている姫乃がおり、笑みを浮かべてこちらを見ている。


 どうやら今日も先に目を覚ましたらしい。


「おはようございます」

「おはよう。先に起きたなら離れてていいのに」

「タカくんが離してくれないんですよ」


 えへへ、と笑顔で答えた。


 寝ている時は力が抜けるから抜け出そうとすれば出来るはずだが、あえてしなかったらしい。


 抱きしめられるのが本当に好きなのだろう。


「離さない」


 そんなに好きなら、と隆史は朝から力を入れて姫乃を抱きしめる。


 んん……、と甘い声を漏らした姫乃は、一切の抵抗を見せないどころか隆史の胸に顔を埋めさせた。


 本当に可愛い、と思いつつ、朝から最愛の人である姫乃の感触を堪能する。


「そんなに抱き締めると私は本当に駄目人間になりますよ」

「いいよ」


 むしろ駄目になってもっと頼ってほしい、と思う。


 勉強を見てくれたりや料理を作ってくれたりするので、それ以外で頼ってくれると嬉しい。


「俺は姫乃専用の駄目人間製造機だからね」

「んん……」


 優しく姫乃の頭を撫でる。


 本来なら起きて朝の支度をするのだが、姫乃と一緒だとこちらも駄目になってしまいそうだ。


 準備をせずにずっとこうしていたい気持ちになってしまうのだから。


「あ……」


 ずっとくっついているわけにもいかずに離れると、姫乃から寂しそうな声が漏れた。


今日は学校があるのだし、どうしても離れないといけない。


「学校行く準備をしよ」

「はい。んん……」


 寂しそうな姫乃を見ていたらキスをしたくなったため、隆史は姫乃の唇を塞ぐ。


 朝でも潤いがあって柔らかい唇は、していてキスを加速させたくなる。


「タカくん……」


 キスさせたからかうっとりとした表情になった姫乃は、もっとキスをしてほしそうだ。


 以前にされたからキスにハマったのだろう。


 好きな人とのキスは他の何よりも幸せなのだから、ハマってしまうのも分かる。


「んん……」


 本当なら止めて学校に行く準備をするべきだが、好きな人がしてほしそうにしているから再びキスをしてしまった。


 どうやらお互いにキスにハマってしまったらしい。


 この時間は本当に幸せで、恋人同士になったらもっと幸せを感じられるだろう。


 キスによって漏れ出る甘い声が室内に響く。


「本当に……まずい、です」

「まずい?」


 何がまずいのか分からず首を傾げる。


「それくらい分かってくださいよ」


 本当に鈍感さんですね、と指で頬をツンツン、と軽く突いてきた。


 彼女の一言である程度想像ができ、好きな人とキス出来る幸せに溺れてしまいそうなのだろう。


 実際に隆史が溺れてしまいそうなのだから。


 キスをするのにまだ恥ずかしさはあるが、したい気持ちを抑えられない。


(本当に付き合ったらこれだけじゃ済まないかも)


 付き合っていない状態でキスをしているのだし、彼氏彼女の関係になったらもっと凄いことになりそうだ。


 一緒に寝たりキスするのはもちろんのこと、それ以上のことをするかもしれない。


 恋人同士ならしてもおかしくはないが、最初は恥ずかしさと緊張で上手く出来ないだろう。


 するとしてもしばらく先の話かもしれないが。


「タカくん……」


 ギュっと姫乃に抱きしめられ、学校に行くギリギリまでベッドでイチャイチャしていた。

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