90試合目 自白

「それで……。どういうことですか? 兄さん」

「うう……」

 俺は、自分でほぼ自白ともいえる発言を柚希にしてしまったことを後悔している。

「いや……。確かに告白されたんだが……」

「気になっているのはそうじゃありません! なぜ私の告白はスルーなのに、その人の告白は本気で受け止めているのか……ということが気になっているのです!」

 柚希は腕をぶんぶんと上下に振りながら、怒りをあらわにしていた。

「そっち!? ていうかお前は肉親だろうが!」

「愛に壁なんてない!!!」

「法律っていう壁があるんだよ」

「ぐぬぬ」

 いつにもまして感情的だな……

「とにかくさ。お前は一番大切だからこそ大事にしたいんだよ」

「一番って本当ですか? なにがあっても?? たとえ兄さんに彼女ができたとしても、私を一番に考えてくれますか??ねえ??ねえねえ??」

 重いよ!!!!

「う、うん……。善処する……」

「冗談ですよ」

「なあんだ……よか……」

「彼女になるのは私ですから」

「違う、そうじゃない」

 しかもこれをマジ顔で言っているのがこの妹の怖いところだ。

「と、とにかくだ。お前のことは大事にしている」

「それならよかったです」

 

 いつもならまだまだ詰めてくる妹だが、今回はここで引いてくれた。どうやら境界線等はしっかり理解をしているようだ。


 次の日―—


俺はいつも通りの時刻に起きて、学校に行く支度をしていた。

「兄さん! 準備はできましたかー? 遅刻しますよ」

「わかってる。準備はできた! じゃあ行こうか」

 俺がドアを開けたその瞬間だった。

「どうも~!」

 ドアの前には紫が立っていた。

 なので俺はドアを一瞬で閉じた。

「兄さん?? どうかしましたか?? 早く行きましょうよ」

  おっと。反射で閉じてしまった。

  俺は再びドアを開けた。

「ひどいよ徹君。僕の顔を見るなりドア閉じちゃうなんてさ。傷つくなあ」

「すまんすまん。悪気があったわけじゃないんだ。ただ少し緊張するっていうか」

「意識してるってこと? ならよかった」

 くっそおお カワイイ……!!

「いちゃいちゃしてるとこごめんなさい兄さん。もしかしてですが、昨日告白されたのって……」

「僕のことだね! 僕が徹君に告白したんだ!」

「な、なんですってーーー!??」

(いやなんで、同じ学校じゃないのに迎えに来るのかなあ~って思ったらまさかのダークホース!!! でも兄さんは優しいから性別とか関係なしに考えるんでしょうね!!! てか法律の壁は!?? 法律なんてくそくらえですよ!! 大体……)

「ど、どうした? 柚希」

「なんでもないです」

 満面の笑みでそう答えた。それ……逆に怖い。

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