64試合目 幼なじみ

「とおくん……???」

「とおくんなの!? 久しぶり!!! 覚えてる!??」

 和倉は俺の手を握りながら笑顔でそう言った。

「ってことはやっぱり……凛!??」

「そう! 覚えててくれたんだ……。でもなんで名前を偽ってたの??」

 ぎくりと徹は目をそらした。

「じ、実は確証が持てなかったからなんだ……」

 俺は嘘をつくことはなく正直に答えた。

「それは何で……」

「昔と性格が違いすぎて……。こんなクールなやつでもなかったし、もっと弱虫だったろ」

「だってとおくんが大人っぽい人が好きって言うから……」

そういえば……


「とおくんとおくん!!!」

 当時5歳だった凛は徹に質問した。

「とおくんはどんな女の子が好きなの」

「俺はあれだなあ。大人っぽい人が好き!」

「へえ。そうなんだ……」


 思い出してきたな……。

「あれかあ……。あの時のことまだ覚えてたんだ」

「そりゃあ忘れるわけないじゃん……。だって今でもとおくんのこと……」

ぴりりりと急に徹の携帯が鳴った。

「悪い。出ていいか?」

「あ!! もちろん!!!」

 俺は携帯を耳に当て電話を始めた。

「もしもし」

『もしもし! 私の愛しい徹♡ いつになったら出てくるのよ。門で待ってるわよ」

 相手は鈴だった。

「誰が愛しい徹だ! 今は取り込み中なんだ。先帰ってろ」

「もしかして女!?」

 なぜこんな時に限ってこんなにも勘がいいのだろう……

「まあそうだけど……」

「なんですって!! すぐ行く!!!」

「おいちょっとまて……」

 鈴は俺の話も聞かずに電話を切ってしまった。

「まったく仕方ないやつだな……」

「あのさ……。とおくん」

「なんだ?? ってひぃ!?」

 顔を上げるとそこには目に光を失い、完全に邪のオーラを放ち、冷気をまとっている凛がいた。

「電話の相手……。もしかして彼女??」

「ち、違う!!! 彼女なんかじゃない!!!」

「でも『愛しい徹』って……」

「あれはあいつが勝手に言ってるだけだ!」

「ならよかった!!」

 凛は目に光を取り戻し、さっきの明るい状態に戻った。

(なんでこんな浮気したみたいな雰囲気になるんだ……。あぁ、誰かを思い出させるような雰囲気だった)

「でも凛が生徒会長だなんてなあ……」

「すごいでしょ!」

 えっへん。と言いながら手を腰に当て胸を張り自信満々にする姿はどこか懐かしさを思い出させた。

「でもその姿は昔のまんまだな。もう泣き虫じゃないか?」

「も~!!! とおくんのいじわる!! これでも生徒会長頑張ってるんだからね!」

 その時、扉がガチャリと開いた。

「徹!!」

「鈴!!?」

「徹……???」

 凛はまた殺気立った。

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