50試合目 感謝

 あの後そのまま父は寝ずに仕事へと向かっていった。

妹は泣き疲れたのか目を真っ赤にしたままいつもの時間になっても起きずしっかりと眠っていた。

 俺はあの後睡眠をとったもののいつもの癖で早く起きてしまった。

「あんまり寝てないな…でもまあいっか。もう一回寝るのも体に悪いしな…。」

 温かいコーヒーを作りながら、その待ち時間でトーストを焼いた。

「久しぶりだなあ、自分で朝ごはんを作るのは。しかし悪くない…」

 ゆっくりとした朝を久しぶりに過ごせた気がしてとても副交感神経を刺激されるようなゆったり感に陥った。

 しかしまあ、最近は柚希としっかり話せる機会も多くてよかったよかった。

 コーヒーカップいっぱいに入ったブラックコーヒーを飲み、イチゴジャムをたっぷりと塗った食パンを食べる。控えめに言って幸せだ。

 ぴんぽーん。

 何だ???配達か???

 徹が玄関のドアを開けるとそこに立っていたのは春馬だった。

「おう!お前久しぶりだな!!」

「え?数日しかたってないよ??」 

 おっとしまった。最近はシリアス展開だったり妹回だったりでお前のことをあまり見ていない気分だった。

「すまんすまん、冗談だ。」

「なんだ~冗談か!それより西屋敷、これ見てよ!」

 春馬はポケットから一枚の紙を取り出した。そこには、

 "夏休み8/31日まで。課題提出日9/1“と書いてあった。

「それがどうした???」

「西屋敷!!今日何日かわかってるの!??」

「8/28だな。24時間テレビを見なきゃいけないな。」

「そうだね!じゃなくて課題ちゃんとやらなきゃ!!!」

 紙に何度も指をさしながら正気かと疑うかの如く俺を諭した。

「いややったが???」

「え???」

「ん???」

 なぜ春馬は固まったんだ???まさか春馬でもあのテンプレみたいなことはしないよな???

「宿題まだやってない…」

「そうか、それは気の毒に。さようなら。」

 ドアを閉めようとしたとき、春馬はその隙間に手を入れ無理やりこじ開けようとした。

「ちょ!!!お前!!!離せ!!!」

「俺を見捨てるって言うのかよ!!!!親友だろ!!!」

「親友だからこそ厳しくするんだ!!!!」

 ドアで言い争いをしている時だった。

「兄さん…何してるんですか…??」

 階段から寝巻状態の妹が降りてきた。

「すまない柚希、なんかこいつが宿題やってないみたいで…ったく宿題くらいちゃんとやれよ!」

 と春馬を叱ると柚希がいきなり「あっ!!!!」と大声を出した。。

「どうした???柚希…。」

「宿題…やってないです…」

「はあああああああああああ!???????」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る