49試合目 真実

 西屋敷俊介は当時、急いで病院まで向かっていた。

(母さんが倒れた…!??、心配だ…早くついてくれっ!!!!!)

 心配で心配で口から心臓が出そうなほど鼓動は上がっていく…

 そして車を走らせ、10分が立ったところだった。道路でずっと動かない車があった。

「何をやってんだあの車…くそっ!!!ってん…??」

 俊介が目を凝らしその車の中を覗いてみると運転席にいたおばあさんの様子がおかしいことに気が付いた。

 すぐさま車を出て前の車のおばあさんのところまで向かった。

「大丈夫ですか!!!!!」

 とフロントドアガラスをコンコンと叩きながら聞いた。するとおばあさんは

「きゅ…救急車…」

 と少しの血を口から流しながら俺に頼んだ。

 数分が立ち救急車はやってきた。そして俺も乗るように…と救急隊員の人は言った。

 ついた病院は母さんがいる病院とは違う病院だった。

 おばあさんの話についていろんな方に話をして、気づけば朝になっていた。

 病院に着いた頃には、家族の一人もいなかった。


「後悔がないといえば嘘になる。しかし、あいつならあそこでおばあさんを助ける方を優先しただろう…逆に助けなかったらあいつは多分、俺を一生恨むと思ったんだ…」

 父は瞳に溜めに溜めていた涙を頬に伝らせ、震えながら話した。

「柚希…お前だってわかっているはずだろ…???もし本当に嫌いでかかわりたくないのなら、なんて呼ばないだろ?」

「兄さん…。うう…私は…私は…お母さんのことが大好きだった!」

  柚希も約10年、たまっていた感情を吐き出し始めた。

「知ってる。」

「でもお母さんが亡くなって…お父さんは他の人を優先して…辛かった!!!」

「それも知ってる。」

「お父さんがひどい人でなかったら…私のしたことは最低で…どうしようもなくて…」

 自分の犯した罪に押しつぶされそうになり、そして正義感の強い柚希だからこそ今の話を聞き、苦しんだ…。

「それは違う」

 するといきなり父さんは柚希にこういった。

「柚希がそう思うのも仕方がない、普通ならすぐに向かうべきだった。それを向かわなかったから、最低な人と思われても仕方がないものだったんだ…。

それはそれだけ柚希が、母さんのことを思っていたという証拠だ!!!!…今まで…っく…ひどい思いさせて…ッすまなかった!!!!!!」

 そして頭を柚希に深く下げた。

「知ってるか柚希???父さん、毎月母さんの墓参り行ってんだぜ??」

「どうしてそれを!?」

「そりゃまあ、荷物みればわかるでしょ。」

 月命日が近くなると花と線香等を父は買っていたのを徹は知っていた。

「そう…だったの…。てっきり…お母さんのことなんて好きじゃなくて忘れてるものだと…。」

「忘れるものか!!!!俺は今でもあいつを愛してる。」

「っん…ごめん…なさい!!!今まで素っ気ない態度とって勝手に思い込みまでして…本当にごめんなさい…ごめんなさい…!!」

 そんな涙を流す柚希の頭をなでながら父は深く抱きしめた。

「俺こそ…今まで辛い思いさせて悪かったな…」

 こうして10年ほどの問題が解決したのだった。


そして、朝日が昇り始めた。

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