13試合目 目覚め

 大会の日の夜…

 西屋敷はいつものように部屋でぼーっとしていた。

やっぱ家は安心だ。聞こえるのは柚希が料理を作ってる音だけ。

 「なんて幸せなんだろう…」

しかしあれだな。一応文面でも紫に謝っておくか…

あれ???スマホどこだっけな。

ピンポーン♪

 家のインターホンが鳴った。

なんだ???春馬か???

 「はあい!今行きまーす。」

 まあインターホンのテレビを見るまでもないか。

徹がドアを開けるとそこに立っていたのは芥田紫だった。

 「え!??なんでここに!??」

 「春馬君に教えてもらったんだ。」

あいつの口軽すぎてそのまま昇天すればいいのに。

 「お邪魔…だったかな?」

 「いや!!!!そんなことは!!!!俺も今日迷惑かけたから連絡しなきゃって思ってたから!!!ありがたい!」

 「そ、そっか!ならよかった…」

かわいい。これが世にいう"尊い"ってやつですか?

 「兄さーん。春馬君だった~~~??」

柚希が一旦作業を止め、玄関までやってきた。

 「兄さんの浮気者。」

紫を見るや否や妹の顔は人を軽蔑するかのようだった。怖い。

 「なんでだよ!!!」

 「だって…また新しい女連れてきて!」

 「いや、紫は男だから!」

 「嘘だ!こんなかわいくてきれいな女の人なんているわけない!」

いやわかる。だが違うのだ。妹よ…

 「僕…男ですよ?」

 「え?ほんとに??」

 「ほんとに」

 「なーんだ。ならよかった~~~。でも男の人が好きとかないですよね…?」

ぎく!!!!

 「こら!!!失礼だぞ!」

 「だって、だって。」

 「大体。たとえ、男を好きだとしても海外じゃよくあることだ。別にいいだろ?」

え…

 「でも!!!そしたらライバルが…」

 「いや大丈夫だよ?僕はが好きだから。」

 「ごめんな?妹が迷惑かけて。」

 「いいよ。僕たちもう友達だろう?」 

天使!!!紫イズ天使!

 「あ、ありがとう…」

 「わ、私もごめんなさい…」

 「大丈夫。それよりいいお兄さんを持ったね。」 

 「はい!」

この紫さんって方、とてもいい人です!!!!

 「兄さん!」

 「ん?」

 「紫さん。いい人ですね!」

 「そうだな。いい人すぎるくらいだ。」

 「ちょ、やめて!恥ずかしい。」

kawaii of the year 2021 受賞おめでとう。

 「ところでなんで今日はうちに??」

 「そ、そうだね。実は病室に徹のスマホがおいてあったんだ。」

 「ありがとう!!!忘れてたのか!」

 「気づかなかったの???」

 「気づかなかった。本当助かった!!」

 「いやいやよかったよ。じゃあ僕はこれで!」

 「ほんと、ありがとな!気を付けて帰れよ!」

 「ありがとう。」

そうして紫は玄関を出た。 

帰り道、紫は一人で考え事をしていた。

  あんなこと言ってくれる人は初めてだったな…

 「男が好き?キモ」「お前!?男だったの!?ないわあ」

「芥田くんって男が好きだったの??幻滅…」 

 

  「男を好きだとしても海外じゃよくあることだ。別にいいだろ?」

初めて肯定された…とてもうれしかった。彼なら…僕を受け入れて…ってこれじゃまるで…


      彼のことを…みたいじゃないか…。

 

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