5試合目 死神からの迎え
西屋敷徹は震えていた。今までにないくらい。どれくらいかと聞かれれば、今なら摩擦で発電所運営をできるくらい。
「兄さん。この人知り合い?」
「あばっばばっばばばっばっっば」
しゃべりたくても唇が震え、舌が痙攣しているので話せない。
「そっか。私にも言えない人なんだ。」
誤解に誤解を生み、誤解サンド状態だ。
「大丈夫ですよ。そんな関係ではありません。西屋敷君とはただの友達です。」
相川さくらは笑顔で言った。詐欺師の手口だ。
「ならいいですけど…とりあえず上がってください。」
「え!???」
驚愕で口からつい漏れてしまった。
「この話はまた後でしましょうね。兄さん?」
妹の顔が今までで一番怖い。さくらウィルスに感染したんだ…俺の柚希を返してくれ!!!!!
こんなことを考えてる間に柚希がさくらさんをリビングに通していた。
そして俺とさくらさんが椅子に座って向かい合った瞬間、
「ごゆっくり~」
と柚希は自分の部屋に帰ってしまった。
カチカチと少しモダンなアナログ時計の音だけがリビングを数分包んだのち、
さくらさんは、口を開いた。
「返信遅いじゃない。秒で返しなさいよ。」
「無理に決まってるだろ!!」
メンヘラ女みたいなこと言いやがって。
「でもあなたこの時間はベッドで携帯いじってるはずよね?」
え????
「なんで知ってるの!?」
「春馬君の家を覗くついでに隣の西屋敷君の家も覗いてたのよ。」
なるほど!!!春馬のついでに俺も…は???
「え???犯罪じゃん。」
「そうね。犯罪的なかっこよさよね。春馬君。」
おかしいな。すれ違いコントでもしてるのかな?
「そうじゃなくてなんで春馬の家覗いてるんだよ(俺の家も)!!!」
西屋敷が言うと、さくらは目を大きく開けて、
「呼吸をするのと同じで無意識よ?それとも私に呼吸をするなっていうの!?」
と本気で驚いたようにいった。
「どこが同じだ!!!」
「この下衆!卑劣!シスコン男!」
まだシスコンちゃうわ!
「大体、こんな質問本人にしろよ。」
「いやだ。」
「なんでだ?」
「春馬君のこと全然わかってない女みたいになるじゃない。」
こいつ本当に学年一位の頭脳の持ち主か???
「はあ。」
「大体あなたこそ返信遅いのよ。携帯見てたくせに。」
話を一所懸命にすり替えようとするので、乗らないと殺されると考え乗った。
「仕方ないだろ。さくらさん怖いんだから。」
「私のどこが怖いってのよ?」
自覚なしかよ!???
「本気で言ってる?」
一応聞いてみた。
「なんであなたみたいな平凡男に嘘つかなきゃいけないのよ」
「平凡ちゃうわ!」
「じゃああなたの平凡じゃないところ言ってみなさいよ。」
「ぐ、ぐう」
ないわけじゃないもん。今出ないだけだもん。
「と、というか今の態度が怖いって思われる原因だぞ!」
「じゃああなたにだけしかこの態度とってないから大丈夫ね。」
大丈夫じゃない。そう言おうとした時だった。
ピンポーン
今度は誰だ!??
西屋敷がインターホンのテレビを見に行くとそこに映るのは鍋を持った春馬だった。
「春馬君!???」
相川さくらは今までにないくらい大きな声で驚いた。
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