第38話

駅の逆側の試験会場、予備校なんてホントにすぐなのだ。

ただし、入口は大通りの裏に有って知らない人には分かり難い。


和泉さんのバイクがその予備校の入り口前に到着したのは10時2分前。

輝子ちゃんを降ろす。


「ありがとうございます、柿崎さん」


まだ顔の強張ってる輝子ちゃんを降ろす。


「間に合わせるって言ったでしょ。

 頑張って来い、輝子ちゃん」


ヘルメットを外して全開の笑顔を見せる和泉さん。


「は、はい。

 頑張ってきますっ」


輝子ちゃんは笑ってくれた。

会場へ走っていく。


うん、輝子ちゃんなら大丈夫。

それにしても 美少女がニッコリ笑うとホントに可愛い。

スゴイ破壊力。

ファンになっちゃいそうだな。

そんなコト思ってる和泉さん。


さて帰ろう。

バイク久々に動かした。

家からクリーニング屋さんまでお洋服をバイクで運ぼうかな。



和泉さんは自分の部屋を見回す。

良し、キレイッ。

ニマニマと自慢の笑みを浮かべる和泉さんだ。


夏物のお洋服をクリーニングに。

床に散らばる物が減ったお部屋を掃除したのだ。

六郎さんにも手伝って貰っちゃったけど。

おかげで充分キレイ。



「和泉さん、夕食お鍋なんてどうですか?」


六郎さんは夕食の相談。

お鍋、いいね。

季節は秋、夕方になると大分寒くなって来た。


「すき焼きと豚キムチ鍋だったら、どっちが良いですか」


どっちも。

すき焼きは大好きなのだけど、カロリーが気になっちゃう。

キムチかな。

辛いモノ結構好きな和泉さん。


「輝子ちゃんの好みは?」

「覚えていませんが、辛い物がニガテという事は無かった筈です」


おっけー。

鍋なら色々具材を揃えて置いて、苦手な物は避けて貰えばいい。


「輝子さん明日には新潟に帰る事ですし、

 今日は色々話をしましょう」


そっか、帰っちゃうんだ。

今日は土曜日。

明日の日曜日過ぎたら、もう月曜。

高校生の輝子ちゃんが帰るのはトーゼン。


そう言えば彼女、木曜の夜に来てた。

金曜日、学校はどうしたんだ?


「予備校と模試の都合と言ったら許されたみたいですよ」


そんなテキトーな。

でも和泉さんの時も高校三年の秋なんてそんなモノだったかも。

受験や、就職活動の為なら何でも許された。

まして、輝子ちゃんはT大受験生。

高校だって応援こそすれ、ジャマはしないだろうな。


辺りが暗くなって、輝子ちゃんは帰って来た。

不安げな表情じゃない。

真っすぐ前を見た、キリっとした美少女。


真っすぐ和泉さんを見てこう言った。


「柿崎さんにお話が有ります」

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