洗脳されし者の救済・3




ドロリは【挑発】を使ったギルカンテに魔法を連発してる。


だがギルカンテの盾には【魔法無効】があるため、効いていない。


メタってんな。ギルカンテ1人で完封してるわ。


「相手がドロリじゃなきゃ簡単なのに」


ギルマスは倒したいが、ドロリの洗脳は解いてあげたい。


オノはもちろん、俺も世話になった節があるからな。


「“挑発”」


ギルカンテのやつ、クールタイムを完璧に理解してやがる。


「お主らは他をあたられよ。ここは我1人で十分」


ギルカンテが低い声でそう言うと、俺以外の祝福者は散っていった。


我1人で十分とか「冥土の土産に教えてあげる」と同じくらい言いたい!関係ないけど「俺に惚れたら火傷するぜ」も言ってみたい!


こほん、今はドロリだ。言ってみたい言葉は置いておこう。


「おーいドロリ俺のこと覚えてない?」


洗脳にも色々種類があるからな。1つずつ試していくつもりだ。


まずは感情。恐怖心を植え付けられてる可能性がある。


「だから敵じゃろ?」


「ドロリ、それは本音か?」


「なぜ嘘を言わねばならぬのじゃ」


まだ分からんな。次は行動。「こうしなければならない」と思い込まされてるかも知れない。


「なぁ、今どんなことをしてるのか自覚してるのか?」


「敵を倒せと言われたからのぉ」


お?命令されてるぞ。ということは思考をコントロールされたのか?


「それは誰に命令された?」


「“挑発”」


あ、さすがっす先輩。会話中も魔法を守ってくれてありがとう。


「偉大なるフォースド様じゃよ」


偉大なるとか、様って言っちゃってるよこのじじい。


さらに聞くと、車椅子おじさんがフォースドなんだと。親玉判明。


「そいつは今どこにいr」


「もう質問は良いじゃろ」


遮られた。でもドロリ、あんた打つ手なしだぞ?


「“プロテクトエリア”」


プロテクトのエリア?直訳で保護区だが、何をする気だ?


「っ!“煩悶斬”」


いきなり大剣振り回さないで!?王は背中に隠れてるんだぞ!?


ギルカンテがスキルを放つが、ドロリが張った結界みたいなのは壊せていない。


「───地獄の者よ。贄は用意した。今こそ力を───」


詠唱かっこよ!って違う違う。ヤバくない!?絶対召喚させたらダメなやつじゃん!


「“能力移行STR”からの“投擲”」


フォースドの結界を壊した攻撃なら、じいさんの結界も壊せるだろう。


バリリリリリッッッ!!!


なにボスより強い結界張ってんだよ!火花散りすぎじゃい!


「こんなの勝てるわけねぇ!」


ん?後ろでそんな叫び声が聞こえたので、振り返ってみると···


「脆い脆いッ!俺の敵は1人もいないのかァ!?」


うわぁ。ギルマスが楽しそうに地面を殴ってる。片手パンチで少なくとも5人はポリゴンになってるぞ。


素早さが高いキーデでさえ、避けるので精一杯な状況になっている。


てか、ちょっと待て。ここ地下だよな?天井高くね?


そのまま俺は流れるように、領主の方にも目を向ける。え?嘘だろ?


もう立ってるやつ数える程だぞ?うちの人形は無事だからいいけど。


でも、モウスがヤバそう?無理はしないでくれよ。


「──────いでよ、ヘルヘル」


やべっ!詠唱終わっちゃった!瞬間、黒い玉が発生する。


それにしてもヘルヘル?地獄地獄か?地獄の者よ、って言ってたもんな。


黒い玉が破裂し、中から1人の男が出てくる。え、普通にイケメンさん出てきた。こいつ、髪で片目隠すとかオシャレかよ。糸目のくせに。エルフ耳のくせに!イケメンじゃん!


「呼び出したのは貴方ですか?」


「そうじゃ。そこにおるヤツらに死を与えてくれぬか?」


強者感ハンパない!オーラだけでやられそうだし、体に纏っている鎖が厨二心をくすぐる!鎖、鎌、闇魔法の3つは正義の味方だぞ!


「ふむ、贄はどちらに?」


「贄は目の前にいるヤツらじゃ」


「それは贄とは言えませんね」


ん?じいさんと揉めてるのか?チャンスっぽい。


「ふむ、私から提案です。貴方が贄になるというのはいかがでしょう?」


は?呼び出したやつ贄にするとかイカれてるぞ?


「ほっほっほ、今なんと言ったんじゃ」


じいさんんんん!!目が笑ってないぃぃぃ!


「ふむ、老いで難聴のようですね」


なんでお前らで煽りあってんだよ!?敵は俺たちだぞ!!


糸目野郎がドロリに飛びかかるが、杖でいなされてる。ドロリは接近戦もできるのか。なんか負けた気がするぞ。


「ふむ、魔法戦に切り替えましょうか」


糸目野郎がドロリから距離をとって言う。ふむが口癖か?


「この儂に魔法戦とは···嘗められたもんじゃのぉ」


「嘗めるもなにも、あなたが勝つ可能性は万に一つもございません」


だから煽り合いするなや!敵と敵が戦ってるからいいけど。


「ほざけたことを“カラリダント”」


「ふむ、氷魔法で大きな氷塊を作り出しましたか。“ヘルオーテル”」


地獄!マジで地獄!氷魔法と炎魔法がぶつかり合ってる!


「お前強そうだなッ!俺の相手になってくれ!」


大きな声とともに、ヘルヘルにパンチする巨大ギルマス。


「だから味方同士で戦うなよ!」


なにやってんの!?俺たち祝福者の存在意義!


「いいパンチですが、まだまだですね」


片手!?航空エンジン程もあろうかという拳を片手で受け止めた!?


「オーナー!守ってほしいニャ!」


「ギルカンテが全て受け止めてくれるはずだ」


ギルマスがヘルヘルと戦っているため、キーデとポポがやってきた。


「ネジュ!そのゴツい鎧もあなたの人形なの!?」


「そうだけどッ!お前に人形使いだって言った覚えはないぞ!」


領主も合流し、3対1で戦ってる。完全に俺たち蚊帳の外。


「それは私が口滑らしたからアル!」


まじ!?別にバレても減るものじゃないから、いいけどね。


「あ!モウス、大丈夫だったか?」


「疲れたけど大丈夫なのだ」


戦闘音が激しく、モウスの声が聞こえない。表情を見る限り大丈夫そうだから安心。


「“堅甲”」


いい判断だ。ここで【挑発】使ったら死ぬの確定だもんな。


「ネジュ!この状況もどうにかしなさいよ!」


「無理に決まってんだろ!お前アホなの!?」


ポポのやつ、俺に全て押し付けるなよ!あんな連中相手にするとか、裸でヌシジン○ウガ3体と相手するくらいやばいぞ!?


「これは耐えられんじゃろ“カラリダーテル”」


「ふむ、少し肌寒いですね“ヘルオーテル”」


肌寒いじゃなくて、凍え死ぬだろ!ドロリの氷魔法寒すぎるわ!


「王よ、どうされるおつもりで?」


「···とりあえずギルカンテは防御に専念してくれ」


なにか打開策はないのか···?









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