霧の残響




こちらネジュです。しばらく進むと周りが霧に包まれ、ほとんど辺りが見えない状態です。自分がどこにいるかなど、既に分からなくなっており、非常に危険な状態なので、不要不急の戦闘は自粛し、1度街へ戻るべきです。現場からは以上です。


八方塞がりなため、こんな茶番をするしかない。


「完っ全に迷った」


進むべき方向を誤ったのだろう。俺の周辺には霧が立ち込めている。


街へ戻るには自力で帰るか、デスしなければならない。


その2択で悩まされていると、突然なにかが俺の耳を支配した。


「〜〜〜♪〜〜〜♪」


「なんだ?」


歌声?みたいなものが聞こえる。はっきりいって気味が悪い。


だが俺の足は歌声の聞こえてくる方にふらふらとした足取りで進む。


「አድ〜〜♪〜〜ልዎ♪」


また聞こえた。それも先程より大きく。恐らく男の声だ。


俺は歌声のするほうへ導かれるように向かう。


「家···?いや、小屋か」


やがて俺の視界にぼやけて映るのはボロ小屋のような建物。


中央はほとりよりも深い霧なため全容は掴めないが。


「多分絶対きっと必ずなんかあるな」


さてどうしよう。中央への行き方が分からない。


俺が中央への行き方を考えていると、獣の唸り声がすぐ横でする。


ウルフだ。第二の街にもウルフは出現するんだな。


それにしてもなぜ俺に気づかない?あ、霧が濃すぎるからか。


喉の渇きを潤すためなのか、ウルフは湖に顔を近づける。


Oh···マジですか。泳いでいかなくてよかったぁ。


ウルフは渇きが満たされるどころか、逆に体内の水分を全て奪われ干からびた。恐らく湖の水による影響だろう。怖い怖い。


これで中央まで泳いでいくプランは消えた。


あと考えているプランは2つだな。


1つ目は、土魔法で水を埋めることだが、現実的じゃない。


2つ目は、イベントの目が4つあったやつみたいに飛ぶこと。


つまり【能力移行】をSTRにして、上にジャンプするってこと。


失敗したらオワオワリだけど。


でもさ、ここでビビってるようじゃ男じゃねぇだろ?


「いくぜ!“能力移行STR”」


勇気を振り絞り、足に力を込める。あとは跳べばいいだけ。


「距離は!目測100mくらいあるけど!俺なら!出来ーるぅ!」


跳ぶ。わわ!たっけー!お?やべ、落ちるー!!


ごめん無理!下見れない!怖すぎる!いやぁぁぁ!!


恐怖で目を閉じた俺は、そのまま身動き取れずに落下し、する。


「背中いってぇ···え?お!?おお!!成功じゃあ!」


あまりの嬉しさにガッツポーズ。まじか、成功したわ。


あそこからここまで来たのか。さすが俺。やればできるじゃん。


俺は背中をさすりながら立ち上がる。背中強打は地味に辛いな。


遠くからだと分からなかったが、この小屋結構大きいぞ。


「おじゃましまーす」


小屋の中に入ってみた。特に何かが起こるわけではなさそう。


「暗い。“ライト”」


ハズレだと思われる光魔法を使う。俺、回復系がよかったのになんでライトなんだよ。ヒールでいいじゃんか。


うお、ビックリした。明るくなった小屋の中では、女性が微笑んでいるとても大きな絵画が置いてあったり、猫の絵画がある。


そんなたくさんある絵画の中で俺の目に止まったのは、人とは言えないなにかが断頭台で処刑されている絵画だった。


一通り鑑賞を終え、俺は部屋の中央に向かう。机があるからだ。


机の上には一冊の本が。タイトルは『荒れ破壊される都』だな。


面白そうだから少し読んでみよう。






数ページ読んでみたが、全く分からん。見たいか?ほらよ。



◆ማንም ያልነበረው ነገር ነበራቸው። ሆኖም ፣ እኔ ሰው መሆን አልቻልኩም።


◆ከ 500 ዓመታት በፊት ዓለም በመጨረሻ ወደቀች



500以外全て謎。なにこれ。でもフェアも500年前とか言ってたしな。


「タイトルは日本語なのに···ん?今音鳴ったか?」


空耳かもしれないが、カチッとスイッチを押したみたいな音がした。


ガガガガガガガガガガッ!


「やっぱりなにか作動してるぅぅぅ!?!?」


とりあえず外にっ!出れねぇ!?結界みたいなやつが張られてやがる!


どうにかして外に出ようと殴ったり蹴ったりしたが、無理だった。


そして次の瞬間、立っていた小屋の床が消滅し、俺はまた落下する。


「いっつぅ···こんにゃろう!なんでまた背中打たねぇとならないんだ!」


「አድልዎ♪አድልዎ♪」


「嘲笑ってんのか!?」


もうはっきりと歌声が聞こえる。やはり不気味で怖い。


落ちた場所は少しひんやりしてて、コンクリートで造られてる。


「そして目の前には大きな扉···ボス戦ですかぁ?無理ですよぉ?」


ミーにボスはインポッシブルだと思いマース。


あまりの衝撃に、エセみたいな口調になってしまうのも仕方ない。


ゲームでとにかく大きな扉があれば、その先はボスって決まってんの。


ボスに負けたら帰れる。もし勝てば御の字。的なノリで挑んでみるか?


一応、戦えるよう拝敬剣と爆発型人形は所持してある。


「አድልዎ♪አድልዎ♪」


「歌ってるやつも俺を誘ってるみたいだし···よし!いくか」


気合を入れるために頬を叩く。


そのあと、重厚な扉を両手で押す。やっぱり部屋があるな。



━━━━━━━━━━━━━━━

『ムーデキリ』との戦闘を始めます。

━━━━━━━━━━━━━━━



部屋に入る直前に通知がくる。はい、いいえの選択できないようだ。


ボスはムーデキリ?という名前らしい。


「አድልዎ♪አድልዎ♪」


歌声がしたので反射的にそちらに首を向ける。うわキモッ!


そこには、コントラバスを6で演奏する黒ローブを着たやつがいた。


頭まで深く被っているため、表情は分からない。ただただ不気味だ。


「とりあえず爆発型人形をプレゼント!」


ムーデキリに人形が当たり、鳴り響く轟音。そして見えてくる影。


ボスが人形1つでやられるほどヤワではないか。


にしても演奏がウザい。集中力が削がれている気がする。


そんな演奏が突然、ゆったりとしたペースになった。


「もぉうぅいぃつっこぉぷぅれぇ!!??」(「もう1個プレ!?」)


なんで俺の言葉と行動もゆったりなんだよ!


あの野郎!俺だけスローなの!?お前もスローになるんじゃないの!?


うわっ!なんか体に当たったぞ!魔法ですか?魔法放ちましたか!?


まずい。このままだと即お陀仏コースだ。


なんとかこの状況を打開しないと、俺に勝ち目はない。


さっさと負けて帰れ?いやいや、やるからには勝ちたいじゃん?


ボスっぽいから勝利したときの報酬が気になるんだよね。


体がスローになった状態だが俺にはこれがある。


「“のぉうぅりぃよぉくぅいぃこぉおぅSsTtRr”」(「“能力移行STR”」)


「かぁらぁのぉ“とぉうぅてぇきぃ”」(「からの“投擲”」)





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