外伝

Ifストーリー

第26話if  紫帆のブラコンレベルが高かった世界線の話

※今回は第25話「シスタークライシス」後のifストーリーとなっています、没にした話をせっかくなので投稿してみました。


 俺に彼女ができた事を告白してから数日が経過したわけだが、紫帆の行動は落ち着くどころかますます酷くなり、完全にエスカレートしてきていた。

 相変わらず裸で俺のベッドに潜り込んできたり、風呂に入っていたら乱入してきたり、突然俺に下着姿の自撮りを送ってきたりと、その行動はどんどん過激になってきている。

 流石にこれはまずいと思い始めた俺は、紫帆と一度落ち着いて話し合う事にした。

 夕食後、俺はアイスを咥えてリビングに行こうとしていた紫帆を呼び止めダイニングテーブルに座らせる。


「それで私に話ってなにかな、お兄ちゃん?」


「最近のお前の異常な行動についてだよ。マジでどうしたんだよ……」


 俺は目の前に座っている紫帆に対して、そう声をかけた。

 今までもブラコン気味で普通の兄妹よりはスキンシップの多い紫帆だったが、最近は明らかに度が過ぎているのだ。


「異常な行動って、私的には別に全然いつも通りだと思うけど」


「いやいや、前までは全裸でベッドに入ってきたり風呂の中に乱入してきたりはしてなかっただろ」


 平然とそう言い放った紫帆に対して俺はそう突っ込みをいれた。


「あれの事? あれは一種の愛情表現よ。可愛い妹が甘えてあげてるんだからもっと喜んでくれてもいいと思うけどな!」


「流石にやりすぎなんだよ、最近の行動は完全に痴女だぞ」


 妹に対してそんな事は言いたくなかったが、今の紫帆の行動は完全に痴女と言っても過言では無い。

 まさかとは思うが他の男に対しても同じような事をやってるんじゃないだろうな……俺がそんな心配していると、それを察した紫帆は顔をほんのりと赤らめて口を開く。


「……心配しないで、こんな事やってるのはお兄ちゃんだけなんだから」


 その言葉を聞いて一瞬ドキッとさせられる俺だったが、すぐに我に返る。

 他の男にやっていないと分かった事に関しては一安心だが、逆に俺だけにやってるというのはかなり問題では無いだろうか。

 まさかとは思うが恋愛対象として見られているのでは無いだろうか、今までの行動や先程の表情を見た俺はそんな予感がしていた。


「と、とにかく今後はもう少し控えてくれよ。こんな事になってるのが父さんや母さんにバレたらマジで大変な事になるからな……」


 もし親にバレてしまったら、成績優秀者になって爆上がりした俺の株が一気に地の底まで下がるのは目に見えている。

 いや俺の株が下がるだけならまだマシな方で、下手すれば冗談抜きで実家を勘当されかねないとすら思える。


「そこは大丈夫、パパとママには絶対バレないようにするから。ようやく兄ちゃんと2人暮らしできるようになったのに、離れ離れにされても嫌だし……」


 今の言葉を聞くと、どうやら紫帆も自分がやっている事の異常性については認識しているらしい。

 もし紫帆が自分の行動に対して何の疑問も持っていないのであればかなりの大問題だが、一応まだまともな倫理観は持っているようだ。

 それが分かった事はまだ不幸中の幸いと言えるが、果たして今後は自重してくれるようになるのだろうか。


「もう話は終わりよね? じゃあ私はお風呂に入るから」


 そう言い終わった紫帆が俺の目の前で見せつけるように服を脱ぎ始めた様子を見ると、俺の期待は虚しく自重する気が一切無いとはっきり分かってしまった。


「服は脱衣所で脱げよ、脱衣所で」


 俺は頭が痛くなるのを我慢しながら、紫帆を無理やり脱衣所へ押し込む。


「痛い痛いって、もう少し優しくしてよね」


 紫帆は色々と文句を言っていたが、俺は完全に無視をする。

 ただでさえ授業とバイト終わりで疲れていたのに、紫帆のせいでさらに疲れる羽目になってしまった。

 早急にどうにかしなければ禁断の近親愛に発展してしまう可能性があり、このままではかなりまずい気がする。


「いや、ひょっとしてもう既に色々手遅れになってるんじゃ……」


 紫帆と2人でどこか知らない場所へ駆け落ちする、今後起こり得るかもしれない未来を頭のなかで想像してしまった俺は力なくそうつぶやいた。

 とにかく最後の一線を超えてしまう前に何かしらの対策は必ずしなければならない。


「……業者に頼んで部屋に鍵をつけてもらうか」


 このままだと訪れてしまうかもしれない最悪の未来を回避するために、俺は部屋に鍵を付ける事を決意した。

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