第17話 春休みの旅行計画

 2年生後期のテストをついに終えた俺だったが、手応えはバッチリであり、前回同様成績優秀者に選ばれる自信がある。

 実乃里の方も無事にテストが終わったようで、俺達2人は長い春休みに突入していた。

 前々から春休み2人でどこかへ日帰りの旅行に行こうという話をしており、今日はその計画を立てるために実乃里の家で話し合いをする予定だ。

 俺は朝起きて準備をするといつも通りバイクで実乃里の家へと向かい、すっかりと見慣れたマンションに到着した。

 昼食は実乃里が何か作ってくれると聞いていたため、話し合いよりも実はそっちの方が楽しみだったりする。

 部屋の前まで到着した俺がインターホンを鳴らすと、少し眠そうな顔をした実乃里が出てきた。


「おはよう、春樹君……」


「おはよう」


 実乃里は昔から朝がめちゃくちゃ弱いらしく、朝早い1限目の授業の日はいつも苦労しているらしい。

 委員長系眼鏡女子で完璧なイメージのある実乃里にそんな弱点があったのかと最初は少し意外に感じていたが、今ではむしろそれが可愛いとすら思えてくるから不思議だ。

 案内されて部屋に入ると、テーブルの上にはコーヒーメーカーが置かれていた。


「眠気覚ましにコーヒー作ったんだけど、春樹君も飲む?」


「せっかくだし貰うよ」


 俺がそう答えると実乃里は食器棚からコーヒーカップを2つ取り出すとコーヒーを注ぐ。


「砂糖とミルクはどうする?」


「俺はブラック派だから無くても大丈夫」


 昔は苦手だったブラックコーヒーだが、気付けば飲めるようになっており、今ではすっかりブラック派になっていた。

 そんな事を考えていると、突然予想していなかった光景が俺の目に飛び込んでくる。

 なんと実乃里はコーヒーの中に砂糖とミルクを大量投入していたのだ。


「ちょっと待って、そんなに入れる必要ある!?」


 その異常な入れっぷりをみた俺がそうツッコミを入れると、実乃里は恥ずかしそうな表情となり口を開く。


「私ってさ、苦いのが全然駄目なんだよ……友達から毎日ブラックコーヒーで飲んでそうなイメージがあるって良く言われるけど、実は真逆なんだよね」


 俺も実乃里はブラックコーヒーが好きそうだというイメージを勝手に持っていたため、大きな衝撃を受けた。

 どうやら俺は実乃里の弱点をまた1つ見つけてしまったようだ。

 コーヒーを飲み終えた俺達は早速本題について話し始める。


「それでどこに行く? 俺的には動物園とか水族館に行ってみたい気分なんだよな」


「私は遊園地に行きたいな。中学校の修学旅行が最後でそれから全然行ってないしさ」


 いきなり意見が割れてしまったので、どっちに行くべきかを2人でしばらく悩んでいると、全ての条件を満たした場所がある事を俺は思い出す。


「それならさ、アドベンチャーランドはどう?」


 和歌山県にあるアドベンチャーランドは動物園と水族館、遊園地が一体になったテーマパークで、まさに俺達の理想通りの場所だ。

 その上、温水プールや温泉も併設されているため一日中遊べる場所と言っても過言では無いだろう。


「アドベンチャーランドか……結構遠いけど良さそう場所だね、ここにしようよ」


 スマホでアドベンチャーランドのホームページを眺めた実乃里は、すっかりと行く気満々な様子となりそう答えた。


「なら距離があるし、移動は飛行機を使った方がいいな」


「確かにそうだね、 日帰りの旅行って事を考えたらそうなるよね」


 具体的な行き先が決まった事で話が一気に進み始め、今度はテーマパーク内をどの順番で回るか考え始める。


「お昼過ぎくらいまでアトラクションに乗って、レストランで昼ごはんを食べてから動物園と水族館に行って、最後に温泉に入って帰るって流れでどう?」


「アトラクションの時間をもうちょっと増やしたいかなって思ってるけど、最後に温泉って流れはいいと思う」


 遊園地に行きたかった実乃里はアトラクションに乗る時間を増やしたいようだ。

 俺的には動物園や水族館を回る時間が少し短くなっても全然問題無いので、実乃里の希望通りに増やす事にする。


「それなら昼ごはん食べた後もしばらくアトラクションに乗ろうか」


「わがままを言ってごめんね、ありがとう」


 それから具体的な日程や空港からアドベンチャーランドへのアクセス方法、アトラクションに乗る順番などを話し合っていると、気付けばお昼になっていた。


「そろそろお昼にしようか、今日はグラタンを作る予定だよ」


「グラタンか、楽しみだな!」


 以前食べたカルボナーラもめちゃくちゃ美味しかったので、味にはかなり期待できるだろう。

 しばらくの間適当にくつろいで待っていると、キッチンの方から美味しそうな匂いが漂ってくる。


「お待たせ、じゃあ食べようよ」


「めちゃくちゃ美味しそうじゃん」


 おぼんでテーブルまで運ばれてきたグラタンは、見るからに美味しそうな見た目をしており、俺は食欲をかなり刺激されていた。


「いただきます」


 早速グラタンを一口食べる俺だったが、見た目通り非常に美味しく食がどんどん進んだ。


「そんなに急いで食べなくてもどこにも逃げないよ」


 凄い勢いで食べる姿を見て実乃里から笑われてしまうが、それほど美味しかったのだから仕方がない。

 そして俺はグラタンをあっという間に完食した。


「他に決める事ってあるかな?」


「大体決めたから、もう無い気がするな」


 目的地と日程、移動手段が決まったので、重要な部分に関しては全て決まっていると言えるだろう。


「じゃあ今から一緒にショッピングに行かない? 旅行に備えて色々と買いたいものがあるんだよね」


「まだまだ時間もあるし、そうしようか」


 その後、俺達は実乃里の家の近くにあるショッピングモールで買い物をするのだった。

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