僕たちは小説が書けない

田中 海月

第1話 僕は異世界ファンタジーが書けない

 僕は異世界ファンタジーが書けない。


 別に異世界ファンタジーものが嫌いなわけではない。

 むしろ、ラノベコーナーに立ち寄った時に手に取るのは有名な異世界ファンタジー、いわゆるチートハーレム無双と呼ばれるものなんかだったりすることが多いと自分では思う。

 好き、ではあるんだろうなと思う。


 ただ、自分で書こうと思うと、途端にアイデアが湧いてこない。

 設定の部分に斬新なものを取り入れたいと思うのだが、出てくるのは既存の使い古されたものや、物語に矛盾が生じてしまうようなものばかり。


 気分転換しようと小説投稿サイトの他の作家さんたちの異世界ファンタジーを読んでみる。

 だが、読みすぎるとその設定に影響されすぎてしまい、自分なりの小説が書けない。


 どうやって他の人たちは自分にしかない設定を生み出しているのだろう?


 なんで僕が読んでいる小説のキャラクターは、僕の書くキャラと違って生き生きしているのだろう?


 別に、僕だって異世界ファンタジー以外の小説は書くことができる。

 ラブコメは得意中の得意だ。

 シチュエーション、ヒロイン、それを決めるだけでアイデアが湯水の如く湧き出てくる。

 そのおかげで、小説投稿サイトの身内、いわゆる作家志望界隈というところではなかなかいい評価を受けているし、自分の作品を楽しみにしていると言ってくれるフォロワーさんも中にはいる。

 このままラブコメばかり書き続けるのも良いのかもしれない。


 でもやっぱり、異世界ファンタジーを書きたいという熱はそんなつまらない理由では収まってくれそうにはないのだ。



 ******



 今日も机でPCに向かい、設定を練っているところだった。


 だったのだが、所詮は僕の考えた設定。

 すぐに理論が破綻してしまった。


 諦めて、一度気分を変えようと小説サイトのトップを開く。

 えっと……最近一番読んでいる作家さんの次回作……


 そう推し作家さんのページを開くと、どうやら更新内容は一件の近況ノートだけだった。

 気になって開いてみると、タイトルはこう綴られている。




「ラブコメってどうやって書いてるんですか????」

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