そういえば、【共鳴者】とかいうハズレスキルのせいで実家を追放された話したっけ?
佐藤。
第1話 覚醒
――意識が、朦朧とする
今にも暗転しそうな思考を、なんとか気力で維持する。
(なんでこんなことなってんだっけ...?あぁ、さっきのアイツら、盗賊が俺を狙ってきたんだ...)
たしか、俺の金貨が目当てだったハズだ。夜遅くなのに、親切に馬車を出してくれたおっさんの首を切りつけてそう言ってたから間違いない。
(それで、情けなくビビり散らかして、山道で足元滑らしてこのザマ、か。)
死の間際に思い返した自分の姿は、親父や弟が見たら、いっそ殺したいと思うぐらい滑稽だっだろう。
―――おい!あの野郎どこ行った!?
ふいに聞こえてきた盗賊の声に死に体の身体が強ばる。こんな時でも、俺の”ハズレスキル“ではどうすることもできない。
――逃げろ。逃げろ。と本能が叫ぶ。
必死に体を動かそうとしながら、俺の頭にあったのは、おっさんを切りつけたアイツらの短刀のことだった。
実家で見たものとは違う、手入れの行き届いていない、血みどろの刃。おそらく何人も殺したであろうそれは、俺に”死“を実感させるには十分過ぎる死臭を放っていた。
(アレだけは嫌だ...!アレだけは...!)
俺は元々刃物が苦手だった。その事でよく幼馴染や弟に笑われていた。親父は根っからのクラール思考で、臆病な俺に半ば失望していて、そんな俺を叱責した。そして、母さんは...
(そうだ...母さんだけは、そんな俺を優しく抱きとめて、「大丈夫。」って言ってくれたんだ...)
そこから、堰を切ったように後悔が溢れ出した。なんでもいいから、今すぐにでも母さんに会いたくなった。
――だが、郷愁に駆られるにはあまりにも遅すぎた。
「おい!お前ら、ここにいたぜ。」
その言葉と共にガサガサと何人かが俺の周りに集まる音がした。
きっと金を奪い取った後殺されるんだろう。あのおっさんと同じように。
(それは、絶対イヤだ!!!)
「この様子じゃ、戦闘系のスキルじゃねーだろうし、丁度いいからそのまま解体しちまおうぜ。」
そう言って盗賊が俺の周りを囲んだ時、最後の力を振り絞り暴れようとして――
『お前、呆れるぐらい惨めだなー...てか、本当にコイツで大丈夫かよ?』
俺の頭の中からか?どこからか声が聞こえてきた。
『ま、どっちにしろコイツが死んだら厄介だしな...とりあえず、このザコ共は俺がどうにかしてやるよ』
その言葉を最後に、俺の意識は暗転した。
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