変化の手紙

 電話がかかってきたことへの感謝、電話を切ったのにはとある事情があること。これからの自分の人生を書いてもらいたいということ。それが手紙の主な内容だった。

 そして、いつもと違うことがもう一つ。今回の手紙には送り主の住所が書いてあったのだ。


 返事を書いて送ろう。

 何故人生を書いて欲しいのか、ここまでして書いて欲しい人生とは何なのか、俺は知りたくなったのだ。

 しかし、そのためには大きな障害がある。

 ーー厄介なのは伊吹だな。

 自分勝手な行動も然り、この手紙に関しては念を押されたばかり。是が非でも、彼には隠し通さなければいけない。

 そうしないと俺の命はないだろう。


 俺は伊吹に電話をかけた。

「あのさ……」

 吃らないように、詰まらないように言葉を並べる。

「手紙の相手なんだけど、送る相手間違えてたらしい。よく考えてみたら俺の名前なんてどこにも書いてなかったし」

 理由は至ってシンプルなことにした。

 俺が嘘の話を作ったところで、彼にはすぐに気付かれてしまうだろう。

 疑われるかと思っていたが、意外にもあっさり彼は信じたようだった。

 「だいぶ物騒な相手だな。誰と間違えたんだか。でももう心配いらないんだな」

 そう言って深く息をついた。

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