次の手紙

 月曜日、俺は柄にもなく郵便受けの前に立っていた。手紙が届いたらすぐに連絡をしろと釘を刺されためである。


 一昨日、伊吹にことの顛末を話すと、こってりと絞られた。普段温厚な彼が、これだけ怒りをあらわにしたのは、あのとき以来かもしれない。

 説教は日が昇るまで続き、俺の正座が限界を迎えた頃に終わった。


「俺は怒ってるんじゃなくて、心配なんだ。

洸さんのこともあるし。もう少し自分のことを大事にしてくれよ」

 怒った後、苦しそうな顔でそう言うと、俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。この手はずっと変わらない。

 その時は、次に届くであろう手紙を確認するまでうちにいると言って聞かなかった が、朝一で打ち合わせが入ったらしく、しぶしぶ会社へと向かっていった。

 月曜日、届いたらすぐ連絡するという条件をつけて。

 

 そして冒頭へ戻る。

 暑い。こんな真っ昼間から外で手紙を待つなんて、普段の俺じゃありえない。ただ、もう一度あの説教を受けるくらいなら、このまま1日外にいた方が断然マシだと思う。

 そんなしょうがないことを考えていると、バイクに乗った配達員がやってきた。お礼を言って郵便物を受け取る。

 それは、やっぱり狐が描かれている封筒だった。

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