第25話 Come here.



国際電話で、今、二人きりの姉弟が話をしている。

弟は淡々と話しているが、姉の方は涙を悟られまいと、しっかりとした声で答えている。


「ねーちゃん、俺、涼太」


「涼太。」


「久しぶりだね」


「うん、久しぶり過ぎるくらいだよね。東京の店長さんに連絡先は聞いてたけど、涼太から連絡があるまでは待ってやってくれって」


「そうなんだ、俺が店長に、そう言ったんだよ」


「辛かったから?」


「うん。ねーちゃん、何んでもお見通しだな」


「頑張ってたんだよね」


 その言葉に、涼太も思わず涙が出そうになるが、電話を続ける。


「うん、でさ、ねーちゃん、アメリカに来ない?」


「え?」


「店長から聞いてないの?」


「店長さんからは涼太のこと、定期的に連絡くれてたわよ」

「そっか、俺、店、任されたんだよ。ニューヨークのクィーンズって所。小さい店だけど、俺、店長だよ、そこの板長だよ。でさ、約束したよね。店持って、ねーちゃんをアメリカに呼ぶって。ねーちゃん、おいでよ。俺が旅費も宿泊費も払うからさ」


「でも、高くつくわよ」


「え?」


「店長から聞いてないの?」


「何?」


「二人分の旅費、払える?」


「?」


「私、結婚したのよ。それに早く呼んでくれないと三人分の旅費になるかもしれないわよ」


「そうか!分かった!直ぐに手配するよ! でも、妊婦が飛行機に乗れたっけ?」


「大丈夫、いざとなったら目覚まし時計型タイムマシーンで直ぐに行くから!」


「目覚まし時計!」


「冗談よ」

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