第3話
そして、現在の地球では。
窓際でゆっくりと煙草を吹かしていると、優しい声に呼びかけられた。
「マルちゃん、晩御飯できたよ」
「おおー、晩飯か、めっちゃ腹減っててん」
「遅くなってごめんね」
「ええねん、ええねん、共働きやさかいな、しゃーないんちゃう」
小さなテーブルには1歳児用の小さな椅子が引っ掛けられている。
ぺペンギン専用の椅子で、食事はいつも其処に座って食べている。
「あ、遅くなりました。マルセリーノさん、お待たせしますた」
「お前なぁ、『しますた』ってドアホ! 日本語ってそないに難しい? まま、ええわ、お風呂で仕事の疲れ落とせたか?」
「はい、気持ちよかったです」
と答えて、私は未だ乾き切っていないボサボサの髪をタオルでバサバサと擦りながら食卓に着いた。
「じゃ、皆さん、いただきましょうね」
と優しい声が食卓に広がると
「いただきます」
と言う声が唱和するように其の言葉に答えた。
「しかし、このシラスめっちゃ美味いな。このネギいうやつの輪っかの中に1匹づつシラス入れたあるところなんか見た目もええし、まさに食の芸術やな」
「ありがと、マルちゃん」
「こういうのを料理って言うんやろな、お前もそう思うやろ?」
「マルセリーノさん、勘弁してくださいよぉ。あの時は、何もせずにそのまま出してすみませんでした」
「ドアホ、誰もそんなん言うてるんちゃうわ、そうゆう言い方したらワイがめっちゃ悪い奴に聞こえるやろが!こういうのを料理って言うんやんなぁーって、同意を求めてるだけやろ、この素ボケが! ほんまかなんやっちゃなぁ、もぉ」
そう言いながらぺペンギンさんは彼女に同意を求めた。
「マルちゃん、ありがとう。そう言ってもらえると作り甲斐があるわ」
毎晩こうやって食事をする。
私の最高の時間だ。
多分だけど皆んなもそう思ってくれていると思う。
まさかこんな日々が訪れてくれるなんて、想像もしていなかった。
今まで、其れなりに、それなり以上に苦労してきた、と思ってきた。
私以上に苦労している人達もたくさんいると思う。
其れでも、喜びが待っている苦労なら、それは幸せなことだろうと、其の苦労さえも喜びではないのか?
とやっと思えるようになってきた。
大切な妻、美咲ちゃん、私を見つけてくれて、ありがとう。
過酷な運命よ、幸せをありがとう。
やっとそう言えるようになったよ。
ぺペンギンさん、ドアホは少しづつですが成長していきます。それでいいですよね。
「そらあかんわ」
「え?」
「せやから、それではあかんねんて」
「何ですか!?」
と私は振り向くと
「美咲ちゃん、それやないねんて、こっちのピースやねんって」
「あっ、ほんとだ、マルちゃん凄い!」
美咲ちゃんとマルセリーノさんは、毎晩恒例の食後のパズルを楽しんでいた。
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