Country to stop.

クラゾミ

Sub-story

番外編「very hot」



 煙立ち込め、様々な知らない色の声が聞こえる空間。


「ロボハン、何頼む?」


 席に座り、最初に口を開いたのは和束だった。


「タンとカルビ、あとハラミを八人前」


「おっけー、僕も同じやつにしよ」


 机の奥に設置されたタブレットを手に取り、和束は淡々とメニューを選択していく。


「ご飯は?」


「大三つ」


「おっけー」


 和束とロボハンのとてつもない手慣れように驚いたのも束の間。


「レーリは?何食べる?」


 眩しい笑顔で、和束は私を見てそう言った。


「え、今の全員分の注文じゃないの…?」


「ん?いや、今のロボハンと僕の分だけど」


 タン、カルビ、ハラミ十六人前。


 白ご飯、六つ。


 おかしい、この空間にいるのは"三人"だけである。


「…えっと、ネギ塩タンとユッケ、あと小の白ご飯」


 私がメニューを言うと同時に、タブレットを軽々とタップしている。


「ネギ塩タン何人前?」


「…一人前」


 ロボハンはそんな光景に目もくれず、メニュー表のドリンク欄を見ている。


「和束、コーラ入れてくれ」


「んじゃ僕も」


 ほんと仲良いのねあなた達。


「…もっとゆっくり頼まない?じゃないと机の上いっぱいになるけど…」


 机の上がお皿だらけで自由度の低いマップが出来上がらないよう、忠告をした。


「大丈夫、そうしてるから」


 ——そうしてこうなの?


「そうなら…いいけど」


「というかロボハン、これだけでいいの」


「ビビンバと冷麺」


 ———入店してまだ二分なんだけど、注文履歴が食べ始めて一時間くらいの量になってるんだけど。


「じゃあ僕はうどんと炒飯」


 ———焼肉屋なのよね?ここ。


「レーリは?」


 ———レーリは???


「いやまぁ…しめで食べるから…」


「わかった、注文するね」


 和束が注文ボタンを押し、確認メッセージが表示された瞬間。


「あ〜和束、キムチと…ご飯もう一個」


 ロボハンはメニュー表を見ながら目に入った"好きなもの"を片っ端から声に出していく。


 完全におもちゃを前にした子供の目である。


「はいはい」



 時は経ち、注文したメニューの全てを和束とロボハンは平らげた。


 ———私の注文したネギ塩タンも何故か消えていた、その後もう一皿来た。





「塩タン、美味いけど食った感じしないな」


「薄いからね」


 ———塩タン海苔感覚で食べてる?


 そんな会話をしながら、二人は塩タン一枚で白ご飯(大)を一杯平らげていた。


 何度も何度もお皿を下げに来る店員さんに、私は少しだけ申し訳ない気持ちになった。



「和束、追加でさっき頼んだやつもう一回頼んでくれ」


「はいはーい」



 ———あれ、止国ってフードファイター育成機関だっけ。




「私、もうお腹いっぱいだからね」








 ありし日の思い出。



 そんなことを思い返していると、ラストオーダーの時間になっていた。



「リラ、もう食べないの?」


「え、私もう結構食べたと思うんですけど…」



 リラは驚いた顔をしていた。


 確かに机の上にはそこそこのお皿があった。



「…そっか、普通…こんなくらいか…」



 私、どこかで感覚が狂っているかもしれない。




 ちなみに、どこかのバカ達はラストオーダーになった瞬間"食べたことのないメニューを網羅"し始めるのであった。









Parallel world

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