親友は学校だと...
あれから僕はバニーガール姿のラミから逃げるように自室へと戻り、気疲れからか気がついたら朝になっていた。
今日は珍しく仲の良い男友達と登校する約束があるので、僕は部屋にあった甘口の缶コーヒーだけ、飲み家を早めに出ることにした。まあ、それとラミと同じ時間帯に家を出たら他生徒にあらぬ誤解をされ、冗談ではなくマジで嫉妬から殺される可能性があるので、なるべく登校時間は避けた方が良いだろう。
そして僕は昨日の出来事からラミと目を合わせるのが微妙に恥ずかしく、ラミには先に家を出ると言わずに重い足取りを進め男友達との待ち合わせへと向かうのだった。
「おー!羽一!お前なんか、顔色悪いぞー」
と僕の仲の良い男友達こと長岡 友一がいつも通りのテンション高めなスタイルで微笑んでくる。
本来このような陽キャよりなタイプの人間は苦手なのだが、こいつは根は常に人の気持ちや思考を読んで行動しているヤツなので馬があい、趣味のゲームも同じジャンルと言う事で意気投合し、時々遊ぶ間柄となっている。
「お前、さては水星さんと何かあったなー」
と友一がニマニマとしながら趣味の悪い笑みを浮かべるので
「残念ながら、お前みたいに僕はモテないのでえっちに事とかは起こってないよ」
と昨日はバニーガール姿を見せられたりと色々なハプニングが起こったものの、こいつに言うとめちゃくちゃいじられそうな気がしたので言うのはやめておいた。
「モテるってなー。俺は七実一筋なんだよー」
と友一は力説するように長々と小一時間語りだすのではないかと言う程の勢いで得意気に語りだした。七実とは、学園で僕たちの学年である2年生の女子の中でも人気のある女子で学園内のミスコンでも3位になるほどの美人才女だ。ちなみに1位はぶっちぎりの票数を得て優勝した1年生のラミなのだがこうしてみるとラミのすごさに自分なんかが親友でいて良いのかと思うことが多々ある。
なんて、僕ら少し落ち込みつつ友一とたわいもない会話をしたがら学校へと向かうのだった。
あれから数時間たち、午前の授業が終わりを迎え昼休みになった。
教室内の陽キャ女子と男子とのグルーブでお昼を食べている姿、男だけで各々の趣味を語りあっている姿、恋人同士で見つめあっている姿と様々な人の様子を見るのはなんだか様々な人の人生に触れられているようでなんだか楽しい。少し趣味が悪いのか知れないが。そんな事を考えているとぐぅとお腹が食物を求め下品な音をならし始める。僕はラミへの羞恥心で朝急いで家を出たため、朝ごはんを食べ忘れ、お弁当もそもそも作り忘れてしまっていた。空腹から
「はぁー」
と僕がため息をつくのと同時にクラス内の男女の歓声聞こえてくる。
その声がお腹を空かして少々イライラしている状態では耳障りなため、何事だと思い他生徒が注目している視線の方向に目を向けるとそこには困惑した様子であたふたしてるラミがいた。
ちなみにラミとの付き合いは長いが校内で交流すると嫉妬の眼差しで押し潰されそうなため、僕たちは校外での交流がメインで僕たちの仲を知るものは友一ともう一人の女友達しかいない。そんな状況なので声をかけられずに歯がゆい思いをしていると
「すみません。1の5の水星 ラミです。羽一さんいらっしゃいますか?」
とラミが普段の僕への対応からは考えてられないほどに丁寧な物言いで僕を呼ぶようにとクラスの陽キャ女子に言う。まあ、普段のラミの取り繕っていない姿の方が僕的には一緒にいて気が楽なのだが公共の場所で何よりラミは知名度が半端なく高いので仕方がないだろう。
ラミの発言によってクラス中の視線が僕に向く。その視線は何かを品定めするかのような物だったり、嫉妬、殺意と様々な物があった。
僕はそれらを無視しラミの方へ向かう。
「水星さん、どうしたんですか?」
流石にこの状況でラミを呼び捨てにしたら僕の首は飛びそうなので上の名前で呼び、丁寧語を使う事にした。
「は、はい!えっと委員会の報告があって。ちょっと、着てもらえませんか?」
と僕が入ってもいない委員会の口実によって多少は目線の質がましな物となり僕はラミについて行くのだった。
それから僕たちは誰もいない屋上で昼食をとる事になった。
「ラノベやアニメじゃあるまいし、普通学校の屋上なんて立ち入り禁止じゃないのか?」
これは本当にあるあるである。と言うか、日本の全てを高校を見ても屋上を生徒が自由に立ち入り出来る所の方が珍しいのではないか?
「あー...うん!本当はダメだよ。でも、なんかさっき校長先生にお願いしたら許可してくれた」
これが他生徒からの頼みだったらまず許可はおりないだろう。ラミ...恐るべし。
「ほら!お弁当ー。は、羽一は...スクランブルエッグ好きだったよね?つ、作っといたから...冷める前に食べちゃて」
とラミは頬を赤く染めながら慈しむような表情で呟く。
弁当箱を開けると、とろとろとしていてこおばしい香りのするスクランブルエッグとその他魅力的な料理がきれいに装飾されている。
スクランブルエッグを1口、口に運ぶと卵の優しい風味が口いっぱいに広がり、それに拍車をかけるように醤油のこおばしい風味広がった。
「お、美味しい!」
と僕が呟くとラミは頬を赤らめ人差し指で頬を撫でながら
「...う、嬉しい...なら、これ...あ、あーん...」
と言い大学芋を僕の口元まで持ってくる。
これは食べさせてくれると言う事なのだろうか。か、可愛い過ぎる...僕は理性が抑えられず、パクッと大学芋を頬張った。
ラミはおそらく照れているのか、腕をパタパタとしながら
「...お、美味しい?...」
と慈しむような目線で見つめてくる。
「お、おう...本当に美味しい...毎日食べたいくらいだ」
僕の発言にラミは何故か頬を真っ赤に染め逃げたしてしまった。
あれ?この発言はあらぬ誤解をされるのではないか?と僕は本心から毎日食べたいと言ったが捉えようによってはプロポーズになるのではないか?と今さら気づいたのだった。
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