第27話 邂逅
「まさか……新規のダンジョンか?」
ジェームスは顔をしかめる。
「ええ、そうです。新しくできたダンジョンなら報告されていないケースもあるでしょうし、そもそも見つかってないケースもあります。そのダンジョンを攻略した者がいるのではないでしょうか?」
「ちょっと待って下さい」
声を上げたのは議長のマヤだ。
「イーサン。あなたの言うことが正しかったとしても、二百階層まで辿り着ける『
ぴしゃりと言ったマヤの言葉には説得力があった。
それはここにいる誰もが知っていた。
だが、イーサンは自分が出した結論が間違っているとは考えていない。
「おっしゃることはもっともですが、我々の知らない
「そんなバカな!」
ジェームスが吐き捨てるように言う。
「確かに、これは憶測にすぎません。ですが、そうとしか考えられない。この
議場は静まり返る。ありえない話ではあるが、反論するだけの情報もなかった。
「もし、私の仮説があっているなら――」
イーサンの言葉に、学者たちはゴクリと唾を飲み込む。
「近いうち、もっと大きな変化が起こるでしょう」
◇◇◇
四つの『色付き』スライムを倒した翌朝、悠真はうきうきした気持ちで庭に向かった。
赤、青、黄色、緑ときたなら、次は白だろう。
回復魔法の耐性ってのは意味が分からないが、とにかく変わったスライムが出ることに違いない。
そう確信して穴の近くまで行くと、マメゾウがいつも以上に吠えていた。
「すぐ退治してやるから待ってろ!」
悠真はマメゾウを下がらせると、懐中電灯で穴を照らす。白いスライムが本当にいたら不気味な感じもするが、まあ倒すのに支障はないだろう。
そんな軽い気持ちでいた悠真は、意外なものが中にいたことに驚愕する。
「ええええええええええ!?」
しばらく唖然としてしまう。穴にいたのは黒い金属スライムだった。いつもの金属スライムと同じ色、それは問題じゃない。
驚くべきはその大きさ。通常の金属スライムの五倍はある。
ずっしりと
「なんだ、この馬鹿デカイの!? 金属スライムの親玉か?」
まるで子分たちの
「こ、これ倒せるかな……」
悠真は少し弱気になるが「よし!」と意を決し、自分の部屋に一旦戻る。
ありったけのボンベ缶と冷却スプレーを箱に詰め込み、もう一度庭に下りてきた。
穴の横にボンベやスプレーを並べて気合を入れる。準備は万端、ここにある物を全部使っても必ず倒す。
悠真は体に力を込め、『金属化』してから穴に入った。
目の前にいるデカイ金属スライムは、ゆっくりと近づいてくる。今まで感じたことのない
冷却スプレーを両手に持ち、ダブルで冷気を噴射した。
瞬間―― なにかが動く。「え?」気づいた時にはパンパンッと音が鳴り、スプレー缶が破裂した。冷気が辺りに撒き散らされる。
「なんだ!? なにが起きた?」
地面に転がっている冷却スプレーは、なにかで切り裂かれたようにバックリと割れている。
悠真が顔を上げると、そこには二本の触手をうねうねと伸ばしたスライムがいた。
触手の先端は鋭利な刃物となり、切っ先がこちらに向けられている。
「おいおいおい! 嘘だろ!?」
想像していなかった事態が目の前で起こっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます