ツンデレ彼女が愛おしい
梨。
第1話「出会ってしまった」
貴方様は私の言動を信じてくれますか?
そう言った彼女は何処か僕の知っている世界とは全く別の世界に居る人の様だった。
手を伸ばせば届くのに、触れても触れなくとも彼女はこの世界の住人ではないような気がした。
「いいえ」
僕はその一言だけを言い、目を伏せた。
これで何百回だろうか。
初めに会った日から僕は「いいえ」とその一言だけを繰り返していた。
何時になったら彼女は聞き分けが良くなるのだろうか。
そういう成長を期待しながら。
「ふん」っと彼女は鼻を鳴らして目を逸らした。
そして不機嫌になる。
はぁ…。
僕はこっそりため息を吐いた。
「どんなに君が色々な人を味方にしていても僕は君の反対を行くよ」
そう言って冷酷に告げた。
「あっそ…貴方だけよ?そんな冷たい事を言う人は」
もう、諦めたら?と言う表情で僕を見つめる彼女。
なんで君はいつも好きなら好きとか素直に言えないのかな…と少々苛立ちながら歯がゆい気持ちを抑えていた。
「じゃぁ、諦めるよ…僕の負けだ」
そういうと僕の口元は緩んでいた。
「へ!?貴方が諦めるの?…珍しいわね」
そう意外な顔でこっちを見つめた彼女はいつものようにこう言った。
「だったらこっちに来なさい」
ムスッとした様子で彼女は少し耳を赤くしていたのを僕は見逃さない。
「ふっw…君は可愛いのか可愛くないのか…」
そう言って素直な感想を述べるといつものように罵声が飛んでくる。
「う、うるさいわね!」
勿論、顔は正直な様で少し顔を赤らめている様子が見れた。
だが彼女は上げた両手を下ろさない。
ただ目線を下にしていじらしく「貴方が抵抗するからやっとの事で出来たんだからね」
なんて小さく恥じらいの言葉を述べている。
「何人の人にやっていたのか」
と僕は呆れた表情をして勿論行かないわけも無い彼女の所へと両手を広げて見せた。
ぎゅっと抱き締めた途端に「もう、貴方は馬鹿なんだから」と僕の胸の中で頬をプクッとした彼女が拗ねていた。
僕だけは君を認めない。
出会った最初から最後まで絶対に君には落とされない。
それを分かっている僕は今だけ君に頬を寄せてみた。
この時間は君が僕を愛してくれるためだけの時間で僕が君を愛している時間などでは決してないと知っているから。
最後に負け惜しみの顔を見られてその顔が僕の為に歪む姿を見られれば僕はそれだけで良い。
ーENDー
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