heard sunset.

春嵐

01

 学校には、縁がなかった。それほど楽ではない。今日も、普通に店にいる。絶滅危惧種の個人商店。

 コンビニエンスストアが跳梁跋扈ちょうりょうばっこする中で、なんとか生き残っていた。勉強というのには縁がない代わりに、人の顔色をうかがったり売れ筋の商品を見つけたりするのは得意。プライベートブランドも、多少高いブランド料で買い取ったりしている。各コンビニの売れ筋商品だけ置いてあるような、そんな感じの店。

 だから、ときどき来る学生服の客を見ると、自分もあんな風だったのかなと思う。自分にはない、時間。青春と呼ばれるやつ。

 でも自分は。このレジにいる。ここから、たぶん、一生出れない。一生、死ぬまで、このまま。

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