モルフェウス・チルドレン

涼葉ジロー

第1話 五円と御縁と神託と

 未来とは蝶の羽ばたき程度で変わってしまうらしい。なら、私の知る未来は一体どれほど大きな蝶が必要なのだろうか?


「お兄さん、小銭落としたよ」

 朝の散歩の途中、背後から黄色い帽子の子供が五円玉を差し出してくる。

「どうもありがとう」

 私はそれを受け取って笑顔で背中を見送る。名前も知らない子供だが、素直にいい子だなと思える。温かい気持ちのまま散歩を再開し、なんとなく神社まで足を運ぶ

「あの子がこの一年楽しく過ごせますように」

 拾ってもらった五円玉を賽銭箱に入れて願う。いい子にはいい未来があって欲しい。そんな時


___シャン


 神社の上から涼しい鈴の音が聞こえた。私が見上げると、そこには真っ黒な狐の面をした奇妙な男が屋根の上に立っていた。おかしい、こんな奇妙な男がいれば気づかないわけがない。困惑する私の耳にまた鈴の音が聞こえる


___シャン


「願いは聞き届けた。これより百と八日後にくる災厄をうち滅ぼせ。さすれば願いは成就される。これは神託である」

「え?」

 どこまでも透明な声が魂に吹き込まれるような感覚。何故かこの言葉は嘘ではない。そう確信させるなにかがあった

「まってく……」


___シャン


 鈴の音が再度聞こえた時、一陣の風が吹き舞い散る桜の花びらと共に神社は消えていた。

 時は西暦1999年4月、テレビではノストラダムスの大予言にはこう書かれていると騒いでいた

『1999年7か月、空から恐怖の大王が来るだろう、アンゴルモワの大王を蘇らせ、マルスの前後に首尾よく支配するために』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る