第8話 二人暮らし

「じゃあ、頼んだよ、ルーク」


「うん、任せてっ」


 私が畑から帰ると、家の前でユリウス大臣・・・いいえ、ただのユリウスが近所の男の子と別れて、手を振っていた。


「もう馴染んだの?さすがユリウス様」


「やめてくださいよ、メーテル様」


「ふふっ、じゃあせーのでやめましょっ」


「あぁ」


「「せーのっ!!」」


 私たちはあの後、行商人の馬車を見つけて、乗せてもらった。

 ユリウスは大臣をやっていたためか、顔も広く、偉ぶることなく気さくな人ですぐに人と打ち解けられるようで、行商人も笑顔で乗せてくれた。


 そして、どうやらこの片田舎な村でもすでに馴染んでいる様子だ。


「・・・それで、さっきの子は?」


「あぁ、ルークだよ」


 私が尋ねると笑顔で答えるユリウス。


「何を頼んでいたの?」


「それは・・・秘密さ」


 ウインクしながら、立てた人差し指を唇に付けるユリウス。


「えー、教えてよ」


 私が腕を揺さぶるけれど、彼ははぐらかした。


「・・・それよりさ、畑はどう?」


 調子がいいな、と思いつつ、私は答える。


「順調よ」


「もう食べれそう?」


「それは駄目よ」


「力は使わなかったのかい?」


「使ったわよ、#いつもどおり__・__#」


 ユリウスはそれで納得した顔をする。そして、扉を開けて、どうぞと手で私を案内してくれるので、私は家の中に入る。私が入るまで、待っていてくれたユリウスは私に続いて中に入る。


「でも、ここならいいんじゃないか?ただの仮の住まいだし」


 私の背中にユリウスが話しかけてくる。


「仮の住まいだからよ。ちゃーんと、次の人のことまで考えてあげないと」


 自分でも少し偉そうかなと、ちらっと見ると、ユリウスは私を見て微笑んでいた。


「そうだね」


 私は先にテーブルに肘をつきながら、ため息を漏らす。


「はぁ・・・故郷のことが心配だなぁ。みんな大丈夫かな?」


 私は自分の指を擦る。

 この大魔法を使ってしまった手は綺麗なままだ。

 私の使う魔法にはリスクがある。それは、土地を栄養を一気に奪ってしまうことだ。



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